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 空調機器で売上世界トップのダイキン工業(ダイキン)。同社は今、空調機の販売からソリューション提供へと進化を遂げようとしている。渋谷を舞台に、空調機が持つデータを活用し、社会課題の解決に取り組む新たな試みも始まった。

 この挑戦の中で生じる課題を、どう乗り越え、ソリューションビジネスの事業化をどのように実現しようとしているのか。「両利きの経営」の提唱者チャールズ・オライリー教授の日本における共同研究者・加藤雅則氏が、ダイキンのキーパーソンにインタビューし、その実践のポイントに迫る。

強みの源泉は「実行力」

加藤雅則氏(以下、敬称略) 産官学民連携でオープンイノベーションを目指すプラットフォーム・渋谷未来デザインのプロジェクトに関わる中で、温度や湿度など空調機が持つデータに環境面での価値があることに気付き、現在は事業化に向けての挑戦が始まっています。新しい取り組みには困難がつきものですが、どのような課題に直面しましたか。

松田哲氏(以下、敬称略) もともとダイキンには、新しいことを先取りしよう、挑戦していこうという風土が根付いています。早くから技術開発の拠点としてテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を設置したり、大学と提携して産学協創を進めるなど、次世代に向けた投資もしています。

加藤 ダイキンは、短期の収益力と中長期の成長性の両立を狙う「フュージョン経営」ですからね。

松田 それと同時に、しっかりと成果を出すことも求められる会社です。これまでも高い目標に挑戦し続けることで、会社は大きく成長してきました。着実に目標を達成し、成果を上げていく実行力は、われわれの強みの源泉になっています。

加藤 ダイキンには、「実行に次ぐ実行」という、実行重視のカルチャーがある。そのカルチャーによって培われた強い既存事業が、時に新しい取り組みを阻害するように作用することもあります。その課題をどのようにして乗り越えたのでしょうか。