2021年に日本で初めてフルバンキングシステムをパブリッククラウド上で稼働させるなど、先駆的なDX推進で注目を集めてきた北國銀行。同行のデジタル戦略をCEOとして牽引してきた杖村修司氏と、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏との対談では、同行が目指す「真のデジタルバンク」とその先の展望、DX実現のための人事や組織文化づくりの施策が具体的に語られた。示唆に富む対談から、その骨子をお届けする。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第8回 金融イノベーションフォーラム」における「特別対談演:「真のデジタルバンク」の実現と金融業界の未来/杖村修司氏、入山章栄氏」(2025年1月に配信)をもとに制作しています。

国内で初めてフルバンキングシステムをクラウド化

入山章栄氏(以下、入山) 北國銀行は地方銀行におけるDXの先駆者として、今や日本を牽引する存在です。また一方で、2024年11月に発行された『週刊東洋経済』の「銀行特集」では、「組織文化がよい」「働きがいがある」の2項目でランキングトップに選出されました。私もDXでは人や組織が非常に重要だと考えておりまして、ここに関してもぜひお話しを伺いたいと思います。

 まずは、注目を集めた、国内初のフルバンキングシステムのクラウド化について、教えていただけますか。

杖村修司氏(以下、杖村) もともとは、「銀行のオペレーションを変えたい」というところから出発しています。2000年ごろから始めた「全行改革」において、店舗を統廃合し、オペレーションを変えていくために、システムの変更が必須だったのです。

 システムモダナイズ(システムの近代化)にあたっては、さまざまなパートナーと協働し、システムの運用・開発をフルアウトソースしたこともありました。一方で、2016年ごろから米マイクロソフト本社で議論する中で、「量子コンピューターやAIを見据える時代に、オンプレミスでやっていてどうする」という話になりました。そこで、Azureを使ったクラウド化の仮説を立てて検討し、2021年に稼働にこぎつけたという流れになります。

入山 地方銀行のトップ自らが、米国の巨大IT企業の幹部と直接議論していることに驚きました。それにしても、難しいとされるフルバンキングシステムのクラウド化を実現するための秘訣のようなものは、あったのでしょうか。