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大企業の経営幹部たちが学び始め、ビジネスパーソンの間で注目が高まるリベラルアーツ(教養)。グローバル化やデジタル化が進み、変化のスピードと複雑性が増す世界で起こるさまざまな事柄に対処するために、歴史や哲学なども踏まえた本質的な判断がリーダーに必要とされている。本連載では、『世界のエリートが学んでいる教養書 必読100冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)の著書があるマーケティング戦略コンサルタント、ビジネス書作家の永井孝尚氏が、西洋哲学からエンジニアリングまで幅広い分野の教養について、日々のビジネスと関連付けて解説する。
今回は、欧州留学を通じて得た深い知見を生かし、近代の日本に西洋哲学を伝えた第一人者、九鬼周造の『「いき」の構造』を取り上げ、「いき」なビジネスパーソンになるためのヒントを探る。
ヤボなトランプ大統領と、いきな平井一夫ソニー元社長
関税などで世界中の国々に無理難題を次々と要求するトランプ大統領を見て、私たち日本人の多くは内心、こう感じているのではないだろうか?
「なんかヤボで、いきじゃないよね」
この真逆が、2025年4月の日本経済新聞で「私の履歴書」を連載した、ソニーの元CEO平井一夫氏だ。
平井氏は2012年、経営危機に直面したソニーCEOに就任。周囲からの厳しい声も笑顔でいなし、経営変革のめどが付いた2018年に退任、ソニーを去った。傍目にはまったくそう見えなかったが、激務で「体がボロボロ」だったことも理由だったという。そんな平井氏を見て、私はこう感じてしまう。
「いきな人だなぁ」
しかし「では、ヤボといきの違いを説明してください」と言われると、多くの人は答えられないのではないだろうか?
日本人独特の価値観でもある「いき」を解明した名著が、九鬼周造著『「いき」の構造』だ。