京都府は、2022(令和4)年12月に京都府総合計画を改定し、「安心」「温もり」「ゆめ実現」の3つを柱として「あたたかい京都づくり」を進めている。全ての地域で、一人一人が夢や希望を実現できる。そんな未来の社会像を目指し、文化や産業、知の集積という強みにデジタル技術をかけ合わせる京都府のDXの取り組みについて、西脇隆俊・京都府知事が語る。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第8回 公共DXフォーラム」における「特別講演:デジタル技術を活用した「あたたかい京都づくり」/西脇隆俊氏」(2025年3月に配信)をもとに制作しています。

伝統と革新が融合する京都府の強み

 京都府の一番の強みは、文化が生活の中に根付いていることです。神社仏閣をはじめとする伝統的建築物、食文化、ゲームやアニメのようなメディア文化などを背景に、さまざまな企業、大学、研究機関が集まり、都市として文化を引き継いできました。

 また、京都府は南北に長く、各地に特徴的な文化があります。北部は日本海と接する「海の京都」。中間地域は森林資源の豊富な「森の京都」。南部の「お茶の京都」、大阪方面の「竹の里・乙訓」、これらの文化が、京都の文化をより奥深いものにしています。

 産業においては、例えば、伝統工芸の清水焼が、京セラや村田製作所のセラミック技術につながっているように、伝統技術をベースとして、先端技術を有する世界的企業が多数誕生してきました。一方で、京都は日本映画発祥の地で、現在も時代劇の撮影所があります。アニメーションや漫画文化、任天堂をはじめとするゲーム産業も発達し、クロスメディア産業が盛んです。

 さらに、京都府、大阪府、奈良県の8市町村にまたがる「けいはんな学研都市」は、総面積約1万5000ヘクタールに155の研究施設、大学、文化施設などが集まり、産学連携、DX施策の推進にも大きく寄与する存在です。

※けいはんな学研都市:正式名称は関西文化学術研究都市。関東の筑波研究学園都市と並ぶ国家プロジェクトに位置付けられている