
圧倒的な成果をもたらすマーケティング戦略として、売上高1000億円超のBtoB企業が導入するABM(アカウント・ベースド・マーケティング)。日本でも関心が高まっているが、情報や知識の不足から「周回遅れ」の感は否めない。本稿では『法人営業は新規を追うな 重要顧客と最高の関係を築くABM』(庭山一郎著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。日本のBtoB企業がABMを強化すべき理由と具体的な実践ノウハウを、事例を基に解説する。
外資系と比較して「弱い」と言われる日本型の営業。しかし、一度視点を「経営層」から「顧客」へと転換させると、真逆の性質が見えてくるという。一体なぜなのか?
日本企業が見落としている圧倒的な人材の量と質

日本企業が国際競争力を落とし、半導体などのいくつかの主要な市場で新興国の企業に取って代わられている現状から、日本企業の「営業基盤」は強くないのではないか、という声が多く聞こえてきます。
そのいくつかを紹介すると、以下のようなものです。
「営業成績による解雇がないから欧米のセールスパーソンと比べて危機感がない」
「販売予算がそもそも既に見えている数字を積み上げただけで、ストレッチがない」
「外資系企業に比べて予実管理(フォーキャスティング)が緩い」
「インセンティブが低いので貪欲さが足りない」
また、米国流の「デマンドセンター」「インサイドセールス」「セールス」「カスタマーサポート」というマーケティング&セールスのプロセスマネジメントでいえば、日本のエンタープライズ企業の営業職の仕事は新規の獲得をミッションとしたセールスというより、どちらかといえばカスタマーサポートに分類すべきともいわれます。
インセンティブにひも付く受注だけにフォーカスし、毎週案件を進めていくタイプではないからです。それが日本のエンタープライズ企業の売り上げやひいては企業価値が伸びない理由だという人もいます。