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 圧倒的な成果をもたらすマーケティング戦略として、売上高1000億円超のBtoB企業が導入するABM(アカウント・ベースド・マーケティング)。日本でも関心が高まっているが、情報や知識の不足から「周回遅れ」の感は否めない。本稿では『法人営業は新規を追うな 重要顧客と最高の関係を築くABM』(庭山一郎著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。日本のBtoB企業がABMを強化すべき理由と具体的な実践ノウハウを、事例を基に解説する。

 日本では営業とマーケティングの「壁」が指摘されるが、両者を有機的に連携させるためにはどうすればよいか。ABMの観点から、米SaaS企業スノーフレークの例を見ていく。

ABMの思考は営業とマーケの溝を埋める

 ABMのターゲット企業を選定するとき、基本的には「既存顧客」の中から選びます。

 それは既に信頼関係が築けていること、付き合いが長ければ長いほどその企業に所属する個人情報を名刺交換によって保有していること、そして、その企業を担当しているアカウントセールスの頭の中には、SFAやCRMに書かれていない顧客の情報が豊富に存在することなどが理由です。

 ただ多くの場合、その大口顧客を担当しているアカウントセールスは徹底的に対面で顧客と向き合っているので、マーケティングと連携した経験を持っていません。マーケティングというものは新規の顧客開拓や新製品の販売で使うもので、既存製品を買っていただく既存の大口顧客には不要だと考えている人が日本では経営層にすら多いのです。

 ですから、経営者がABMを採用しても、アカウントセールスチームが強烈に抵抗するのはある意味「普通のこと」です。これをシンフォニーマーケティングでは「俺の客問題」と呼んでいます。

「俺の名刺はデジタル化しないから」

「俺の客に勝手にメール配信するのは止めてくださいね」

「まさか俺の客に勝手に電話とかしませんよね?」