
圧倒的な成果をもたらすマーケティング戦略として、売上高1000億円超のBtoB企業が導入するABM(アカウント・ベースド・マーケティング)。日本でも関心が高まっているが、情報や知識の不足から「周回遅れ」の感は否めない。本稿では『法人営業は新規を追うな 重要顧客と最高の関係を築くABM』(庭山一郎著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。日本のBtoB企業がABMを強化すべき理由と具体的な実践ノウハウを、事例を基に解説する。
倒産の瀬戸際から時価総額1位へと大復活を遂げたアップル。マーケティングから見たその強さの秘密と、日本企業との目線の違いとは?
アップルやブルームバーグの強さの秘密

2000年からの20年間で世界で最も輝いた企業はアップル(Apple)でしょう。スティーブ・ジョブズ氏という天才が創業し、その天才を解雇して数年で倒産寸前まで業績を悪化させ、天才創業者が復帰して一気に時価総額世界一の企業になる、という映画でもここまではないという離れ業をやってのけた企業ですが、その特徴はすべての製品・サービスのターゲットセグメントが一致しているということです。
よくアップルの強さは「パーソナルコンピューター」「スマートフォン」「タブレット」「腕時計」そしてそれらのデバイスで動く「アプリケーション」と「データストレージサービス」などとても数少ないラインアップで膨大な売り上げを稼いでいることだといわれます。経営戦略や財務から見ればこれほどの効率はなく、それをファブレスでつくっているとなればリスクも最小です。
しかしマーケティングの視座から見れば、アップルの強みは完全一致したターゲットセグメントに対して連携する製品やサービスを展開している点です。
アップルウオッチを着けている人は圧倒的にiPhoneユーザーが多く、その人が使っているタブレットはiPadで、ノートパソコンはMacBookです。それらのデバイスはアプリケーションで高度に連携し、スケジュールやメール、メッセージ、健康状態をシェアして、先端のハイテクノロジーと、人間らしいハイタッチを融合したライフスタイルを実現してくれます。
これは、売り上げ規模が同じ頃のソニーや東芝やパナソニックにはなかった特徴です。