
ビジネスや投資に欠かせない「会計指標」。うまく使いこなすことができれば、決算書からビジネスの成果や課題が見えてくる。本稿では『見るだけでKPIの構造から使い方までわかる 会計指標の比較図鑑』(矢部謙介著/日本実業出版社)から内容の一部を抜粋・再編集。実在する会社の決算書を比較しながら、会計指標とビジネスの結びつきをさまざまな視点で分析する。
2024年3月期決算で減収減益となった日立製作所と、増収増益を記録したパナソニックホールディングス(HD)。業績は対照的であったにもかかわらず、なぜ両社の株価は逆の動きを見せたのか? その背景を読み解く。
株主還元に対する姿勢が表れる配当性向、総還元性向
減収減益の日立が最高益のパナソニックに株価で大差をつけた理由

■ 巨額の赤字を計上してから構造改革を進めてきた日立製作所
ここでは、電機業界の中から、パナソニックホールディングス(以下、パナソニックHD)および日立製作所の決算書と、代表的な株主還元指標である配当性向と総還元性向を取り上げます。
日本を代表する総合電機メーカーとして有名な両社ですが、近年は大きな事業再編を進めていることでも知られます。
日立製作所は、2009年3月期に7873億円という、当時の製造業としては過去最大の巨額最終赤字を計上して以降、積極的な事業構造改革を行なってきました。
2012年3月にHDD(ハードディスクドライブ)事業を米ウエスタンデジタルに売却したのを皮切りに、その後は日立物流(現ロジスティード)、日立キャピタル(現三菱HCキャピタル)などの上場子会社を次々と売却しました。
最近では、2022年8月に日立建機の株式を一部売却、2023年1月には日立金属(現プロテリアル)を売却するとともに、自動車部品を手掛ける日立Astemoの株式を2023年10月に本田技研工業に一部譲渡することで持分法適用会社(関連会社:出資元企業で計上されるB/S上の「投資有価証券」の残高と、P/L上の「持分法による投資損益」とを通じて損益の状況が反映される会社のこと)とし、連結子会社から外しています。