スポティファイのレコメンド機能は、どこまで進化しているか?

 その原動力となっているのが、パーソナライズされた「Daily Mix」や「AI DJ」と呼ばれる独自のレコメンド機能である。スポティファイのライブラリは、音楽ジャンルをはじめとして、テンポやムードなど実にさまざまな特徴によりタグ付けされている。

 このタグ付けの存在こそが、ユーザーの鑑賞習慣に基づくプレイリストの作成を可能にしている。ユーザーが聴いた楽曲に加え、それをいつ、なぜ聴いたのかといったさまざまなデータをAIを活用しながら処理することで、ユーザーが今何を聴きたいかを示してくれる。

 米国のプレミアユーザー向けに2024年4月にリリースされた「AI Playlist」は、ユーザーがその日の気分をモバイルアプリのテキストボックス(検索窓)に入力するだけで、瞬時にプレイリストを作成してくれる。

 AI Playlistが対応可能なプロンプト(指示文)は、「場所」「動物」「アクティビティ」「映画のキャラクター」「色」「絵文字」などで、これに、ジャンルやアーティスト名などを組み合わせると、自分の思い通りのプレイリストが生成しやすくなる。

 例えば、テキストボックスに「小春日和にジョギングをしながら聴きたくなる軽快で楽しくなるような曲」と入力すれば、今の自分の気分に最適な曲を集められることから、効率的に楽曲を探し出すことが可能となり、スポティファイでの音楽体験がさらにパーソナライズ化されることになる。

 AI Playlistは、ユーザーにいつでも新しい音楽に出会える環境を手に入れることができるという新たなユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)を提案する。これにより、音楽を聴く際の選択肢が無限に広がるという未知なる高みへユーザーを押し上げてくれる。

 このことは、スポティファイが優れたパーソナライゼーションとはどのようなものであるかを明確に理解している証左でもある。

 新たなAI投資の目的をコスト削減と捉える企業は多い。スポティファイによるAI Playlistの開発は、パーソナライゼーションこそが、生成AIなど新たなるAI投資によってもたらされる最高の成果であり最大の収益源であることを示してくれるものである。