
デジタイゼーション、デジタライゼーションを経てデジタル化の最終目標となるデジタルトランスフォーメーション(DX)。多くの企業にとって、そこへ到達するためのルート、各プロセスで求められる施策を把握できれば、より戦略的に、そして着実に変革を推し進められるはずだ。
本連載では、『世界のDXはどこまで進んでいるか』(新潮新書)の著者・雨宮寛二氏が、国内の先進企業の事例を中心に、時に海外の事例も交えながら、ビジネスのデジタル化とDXの最前線について解説する。第13回は、米IT企業の「AIエージェント」に関する動向を取り上げる。セールスフォース、マイクロソフトなどが開発・普及に力を入れる「AIエージェント」により、どのようなことが実現するのか?
開発の中心軸が「AIエージェント」へ
2022年以降のAI(人工知能)の進化には、目を見張るものがある。それは、ChatGPTに代表される生成AIが生み出した潮流だ。数年後には、隔世の感を禁じ得ない時代が訪れる予感さえする。
従来は、例えば、AlphaGo(アルファ碁)といった囲碁のAIシステムに代表されるように、「予測AI」の視点で開発が進められてきたが、開発の中心軸が「生成AI」に移り、今では、「エージェントAI」の時代が訪れようとしている。
エージェントAIとは、人が設定した目標を達成するために、必要なデータを収集し、そのデータに基づいて自己のタスクを決定するプログラムだ。目標はあくまでも人が決めるが、目的達成のために取るべき必要なアクションは、エージェントAIが自律的に選択する。
そのため、エージェントAIは生成AIの進化形と捉えることができる。つまり、AIに質問して回答を導き出すというこれまでの生成AIの使い方に加え、実際の行動を自律的に起こすことが可能であることから、正確性が高くハルシネーション(もっともらしい誤った回答)が少ないという点に、その特徴がある。
例えば、エージェントAIに、「支払伝票を作成してください」と伝えると、過去のデータを検索し学習した上で、支払伝票を作成し提示してくれる。このようにエージェントAIは、必要な情報の提供のみに終始してアクションを伴わない生成AIとは異なる。