
コーポレートガバナンス(企業統治)の「形式から実質へ」の本質的な進化が求められている中、日本企業で急増する独立社外取締役。独立社外取締役の役割と取締役会の実効性を向上させる方策について、成蹊学園学園長の江川雅子氏が、一橋大学における研究や上場企業5社で社外取締役を務めた経験に基づき語った講演の骨子をお届けする。
日本のコーポレートガバナンスの評価はアジア第2位に上昇
日本のコーポレートガバナンスに対する評価は高まりを見せています。海外機関投資家の団体であるACGA※によるアジア各国のコーポレートガバナンス評価ランキングで、日本は第2位となりました。
※ACGA:Asian Corporate Governance Association(アジア企業統治協会)。アジア諸国のコーポレートガバナンスの改善を目的とする海外の機関投資家の団体。
ランキングは3年に一度のもので、日本は2020年に発表された前回では5位でしたが、今回(2023年)は2位へと躍進しました。
これは、ここ10年ほどの間に、多くの日本企業で行われたコーポレートガバナンス改革が評価された結果といえます。特に、2023年に東証がPBR1倍未満の会社に対して警告を発し、それを機に日本企業は企業価値向上に焦点を当てるようになりました。そうした姿勢が評価されたと言われています。
日本企業のガバナンスに対するこうした姿勢の変化をよく表すものとして、3月決算企業の株主総会の集中率があります。3月決算企業の集中率は、ピークの1995年には96.2%でしたが、2024年には29.7%と3割未満となっています。
株主総会そのものも大きく変わりました。以前は株主の発言がほとんどない総会が一般的でしたが、現在は、総会を株主との建設的な対話の場と位置付ける会社が少なくありません。
また、機関投資家による議決権行使の姿勢も厳しくなりました。結果として、会社提案が否決・取り下げされるケースも見られるようになりました。
コーポレートガバナンス改革の結果、独立社外取締役が大きく増えました。東証のプライム市場の上場企業では、独立社外取締役が取締役の過半数を占める企業が2割を超えています。その他にも、任意で指名委員会や報酬委員会を設置する会社が増えているなどの変化も見られます。