日本企業の国際化が進み、新興国の駐在を経験した経営人材の重みは増している。SOMPOとダイハツの共通点は、不祥事に揺れる日本企業ということだ。豊富な海外経験で培ったコミュニケーション能力の高さに加えて、経済や社会の揺れ幅が大きい新興国について熟知した経験を組織再生に生かすことを期待された人事だった。
井上と奥村はサンパウロ駐在が重なった際には毎週のようにサッカーボールを追いかけた仲間でもある。両氏と頻繁にプレーしていた団体職員の井上徹哉は「優れたリーダーシップと明るい人柄は共通している」と話す。プレーでは「井上は堅実で正確なディフェンス、奥村は攻守に秀でた万能型のプレーヤー」なのだという。
ブラジルの駐在を経験した人材が経営トップとなることは、まだまだ決して一般的とはいえない。とはいえ、帰国後に本社で役員として活躍するケースは増えているように思う。日本製鉄の橋本英二会長兼CEOはブラジルに駐在して、同国鉄鋼大手ウジミナスの経営権を巡って、アルゼンチンの鉄鋼大手テルニウムと激しい交渉を重ねた。
日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)社長だった近藤正樹は、三菱商事の食品畑を歩み、コーヒーに詳しい。同社のブラジル法人トップ、ブラジル日本商工会議所会頭を経験した後に、出資先のKFCに転じ、業界団体の日本フードサービス協会(東京・港)の会長も務めた。
2代続けてブラジル経験者が社長の「味の素」
ブラジルの現地法人トップ経験者が2代続けて本社社長になった味の素のような例もある。2013年8月からブラジル法人の社長を務めていた西井孝明は15年6月、本体の社長に昇格した。
西井が6年務めた後、その後任として22年4月に社長を引き継いだのが藤江太郎だ。ブラジル法人でも西井の次の社長が藤江だった。味の素の場合、ブラジル法人の扱っている商品数の多さが、グローバルの責任者としての経営に役立つのだという。