深刻な人手不足、物流2024年問題、業務効率化と生産性の向上──小売業が直面するさまざまな課題を解決すべく、あるチームが発足した。イオングループやライフコーポレーション、トライアルといった大手食品スーパーマーケット十数社のほか、ソフトバンク、日本マイクロソフト、パナソニックコネクト、富士通といったIT企業等の有志が集う「チームK.O」だ。
チームK.Oの活動と小売業の未来について4人のメンバーが意見を交わした。その座談会の模様を2回にわたってお届けする。参加者は、チームの設立人であるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)経営戦略本部経営企画部長の北村智宏氏とライフ営業戦略本部兼IT戦略部長の尾崎健氏、営業戦略本部本部長の田岡庸次郎氏、秘書・広報部兼サステナビリティ推進部部長の皆川剛氏である。チームK.Oはどのような経緯で設立されたのか。小売業界が慢性的に抱える問題点とは?(前編/全2回)
業界が結束しないと小売業の未来はない
──チームK.Oは、各社で要職に就くメンバーが自発的に集った異色の集団です。当初は数人のメンバーで発足したのにもかかわらず急速に人員数が増えていますが、なぜ会社の垣根を超えて「チームK.Oに参画したい」と考える人たちが増えているのでしょうか。
U.S.M.H経営戦略本部 経営企画部長 北村智宏氏(以下敬称略) 世の中が急速に変化する中で、複雑で難しい問題ばかりが山積する時代になったからだと思います。それらを「業界共通の課題」と捉え、みんなで協力して取り組むことで「次の世代のために世の中を良くしたい」と考える人たちが特に最近増えていると実感しています。
私たちチームK.Oは「小売業を持続可能で魅力的な業界にする」という理念を掲げて活動する有志の集まりです。似たような理想を掲げる団体も散見されますが、それらの多くと一線を画すのは「企業からの協賛金供与」を一切受けていないことです。メンバーは個人の意思で手弁当で参加する、これまでにない形の異色の集団で、業界で働く人たちであれば誰でも参加できます。みんな本業を抱えながらの活動なので大変だと思うのですが、それでも協力してくれているということは、それだけ小売業に誇りを持ち、その一方で強い危機感も持って働いている人たちなんだと思います。
私自身も同じです。これまでダイエーやイオン、現在のU.S.M.Hなど複数の小売で事業再生やM&Aをはじめとする経営企画の仕事に一貫して携わってきました。その経験から「小売業の多くは同じような問題を抱えている」「企業間の連携が進んでいないために未だ解決に至っていない問題が多く、先送りしている社会課題も多い」「このままでは次の世代に多大な迷惑をかけてしまう」、そのような課題意識を持ちながら日々働いています。