企業会計基準委員会(ASBJ)は2024年9月、リース取引に関する新しい会計基準を公表した。新リース会計基準では、原則として全てのリース契約について資産と負債をバランスシートに計上しなければならない。IFRS(国際財務報告基準)などの国際基準に近づき、投資家は欧米などの企業と日本企業の決算を比較しやすくなる。新基準は2027年4月から原則適用されるが、残された準備期間は長くはない。すでに、新基準への対応準備に動き出した企業もある。
新基準に対応する際のポイントについて、EY新日本監査法人の吉田剛パートナーに聞いた。
2027年4月から原則適用される新基準
――日本におけるリース会計基準の改正は、どのような歴史をたどってきたのでしょうか。
吉田 簡単に言うと、リースはモノを借りてお金を払うという取引です。「買ってないからバランスシート(B/S)に載せない」という時代が長く続きましたが、1990年代、「実質的には買っているのと同じ」という考え方に基づき日本の会計基準が改正されました。
ただ、そこには引き続き欧米の国際基準との差分がありました。実質的に買っているのと同じくらいのお金を払うようなものに関して、リース期間終了後などに借手に所有権が移るもの、格安で買い取ることができるものなどについてはB/Sに載せる必要がありましたが、リース会社に返却するものなどはその対象外にできるとされたのです。このような状態が長く続いたのですが、後に国際基準との差分を埋めるために、2007年にリース会計基準が改正されました。
これは、国際基準との乖離(かいり)が大きく、海外投資家などから「日本の決算書は信用できない」との声が高まったからです。ところが、改正によって「国際基準に追い付いた」と思っていたのですが、国際基準はさらに先に進みます。その新ルールが、2019年以降の事業年度から適用されたIFRS(国際財務報告基準)16号です。
――IFRS16号における変更点はどのようなものですか。