SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏(撮影:今祥雄)

 若者のトレンド発信地として知られるSHIBUYA109。その運営を行う東急グループのSHIBUYA109エンタテイメントは、「around20(15~24歳)」に特化した若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab. (シブヤイチマルキューラボ)」で日々、若者の先端トレンドの調査を行っている。そこから見えてきた彼らの消費行動の実態とは。SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏に話を聞いた。

——SHIBUYA109を運営するSHIBUYA109エンタテイメントが、2018年5月にSHIBUYA109 lab.を設立しました。SHIBUYA109 lab.ではどのような活動をしているのでしょうか。

長田 麻衣/SHIBUYA109エンタテイメントSHIBUYA109 lab.所長

総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPR サポートを経て、2017年にSHIBUYA109エンタテイメントに入社。SHIBUYA109エンタテイメントマーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018 年5月に若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人のaround 20(15歳~24 歳の男女)と接する毎日を過ごしている。

長田麻衣氏(以下敬称略) Z世代は「1996~2012年生まれの11~27歳」と定義されていますが、私たちはその中でもSHIBUYA109のターゲットである「15~24歳のaround20」に特化して彼らに向き合い、理解し、研究することをミッションに活動しています。

 毎月200人のaround20の若者に実際に会い、生の声をもとにトレンド予測をしたり、消費の価値観や実態を可視化し、SHIBUYA109の運営や109ブランドを活用した事業を支援したりしています。

——若者マーケティング機関としての一番の強みはどこにあると考えていますか。

長田 SHIBUYA109という場に加え、多くの若者の生の声から彼らの実態を分析・解明していることが一番の強みです。この活動に協力してくれるメンバーを募った当社独自のネットワーク「SHIBUYA109 lab. MATE(ラボメイト)」の登録数も増え、現在約1000人のaround20の若者とつながっています。

 SHIBUYA 109の館内に立って声をかけ、「今、何がはやっているのか」「109に来る前に何をしていたのか、この後どこに行く予定か」などをヒアリングしたり、アンケートに回答したりしてもらい、定性データとしてaround20の生の声を集めています。グループインタビューも週に1回以上行い、ファッションの楽しみ方や政治、社会課題など、さまざまなテーマでaround20の意識や実態を深掘りしています。

——定性データを重視しているわけですね。

長田 はい。それにはわけがあります。実は私も、2017年にSHIBUYA109エンタテイメントのマーケティング担当になったとき、まずは対象を知ろうと定量調査から始めたんです。でも、回答に差が出にくかったり、同じ人物でもその時々によって答えが変わったりするなど、課題があることが分かりました。

 それに、アンケートなどをまとめて数字で表しても、「なぜ、そうなのか」は分かりません。特に今はトレンドや志向が細分化し多様化して、世代でひとくくりにできない時代です。だからこそ私は、マーケティングの入り口も中心も「人」ありきであることが重要だと考えています。

 そこで、人と向き合い、生の声を聞くことで、その背景や考え方、変化を理解しようとすることにしたのです。これをコツコツと5年間継続して月200人、延べ約1万人のaround20と話をして蓄積した知見は、とても貴重だと思っています。