心理的安全性は重要な組織インフラ
第29回、第27回のコラムにも書いたが、健康・安全が第一、次にプロジェクトの成功に本気であること、これが仕事の優先順位の大原則である。どんな時だって原則として健康第一。フィジカル・メンタル両面で健康を害するような働き方はしないように心がける。そして、同様に安全も第一義であるわけだが、この安全を少し概念拡張して解釈すると、最近よく聞く「心理的安全性(Psychological Safety」も安全の部類と考えてもいいかもしれない。
「日程が遅れていると本当のことを言ったら、部長が嫌な顔をするだろうな」「他の人も忙しいから、仕事を依頼しづらいな」「こんなことを言ったら、バカと思われるかも」という感じで、何かを“恐れて”本当のことを言わない(言えない)。人によっては勝手に恐れすぎ(おじけ過ぎ)と思えることもあるようにも思うが、本人が心理的な危険を感じて(自分の当座の)危険回避を優先して、プロジェクトの成功に真摯(しんし)でない態度・行動をとってしまうことは、プロジェクトマネジメントとしては本来的には避ければならないことである。個人の当座の安全確保を優先してしまうがあまり、気づいている問題やリスクを共有しようとしないということは、トータルでみて周りの誰も幸せにしない。
そして多くの場合、当座の安全確保をした本人にもそんなに遠くない時期にごまかした(やり過ごした)問題のつけが回ってくるものである。小さな因果応報のようにも思える。「あ~、あの時、(自分が気づいていた)問題・リスクがあることを正直に伝えておけばよかった」と思っても、後の祭りである。要するに、「問題・懸念・心配・違和感はそれに気づいた時に言う!うまく言語化できなくても、絞り出して何か伝えようとする!」ことを原則とすべきだ。
でも、その原則的行動がとれないぐらいの何かの“危険性”を感じているので、「怖くて言えない」心理状態に陥ってしまっているということなのだろう。周りの人たちに対して十分な心理的安全性を感じていないことが、「言うべきだとは頭ではわかっているが、言えない」という心理状態に陥っている原因なのだろう。心理的安全性は組織・チームで仕事をする人にとって重要なインフラであることは間違いない。