プロジェクト―リーダーが背景・目的・目標を本気で語っているか

 プロジェクトマネジメントをうまく行う上で、もっとも重要な“前提”はリーダーの本気度合いだろう。「なぜこのプロジェクトをやるのか、このプロジェクトが成し遂げたいことは何か、なぜそれを成し遂げたいのか」をリーダーがメンバーにきちんと語っているのか、メンバーがそれに腹落ちしているのかは、プロジェクトの成否に大きな影響を及ぼす。

 プロジェクトの背景、プロジェクトの目標(到達点とその時期)、そしてその「目標を目標とする理由」であるプロジェクトの目的について、プロジェクトを率いるリーダーが、それらを考え抜いて、メンバーに分かりやすく伝える努力をしているだろうか。

 目がキラキラしている純粋なメンバーの一人をイメージしてみてほしい。そのメンバーから「このプロジェクトはなんのためにやるのですか? リーダーはそれを本気でやり切りたいと思っているのですか?」と真顔で(真剣にという意味で)聞かれた時に、真摯な姿勢で分かりやすく説明できるだろうか。照れ隠しなのかもしれないが、「いや~、上からこれをやれって言われてさ~、やることになったんだよね。」というような回答では、それを聞いた人は肩透かしをされたように感じるものだ。

 また、「目的とかいいから、言われたことをやればいいんだよ。それであなたのやるべきことはできてるの?」と、質問をいなして逆に突き落としをするリーダーもいる。

 言うまでもなく、いずれもよくないリーダーの例である。ごまかしていることがバレバレで、質問した人からの信頼は大きく落ちる。そんなリーダーにメンバーはついていこうという気が失せる。困難を共に乗り越えようという気になれない。

 世の中にはさまざまなリーダーの定義があるが、私が好きなリーダーの定義のひとつは、ドラッカーの「リーダーとは、ついてくる人がいる人」である。シンプルだが本質を言い当てていると思う。リーダーは権限で人を動かすのではなく、その人の人間力で周りの人が協力してくれるというのが、プロジェクトリーダーの本来のあるべき姿であろう。