今回は、研究開発部門で行われている技術交流会(発表会)を魅力的に運営する姿勢と方法を取り上げる。ここでいう技術交流会とは、研究所や開発センターの研究員・技術者が、自分の研究内容を社内の人に説明(発表)し、研究内容の理解を促したり、研究の価値を高める気付きを期待する会合のことである。
「他社では技術交流会はうまくやっているか?」という類の質問を受けることがよくある。秘密保持上、具体的な企業名や研究所名を挙げて紹介することはここでは控えるが、要するに主催者がどのような姿勢で技術交流会を企画し、参加者がどのような姿勢で臨んでいるかが、良い、悪いの違いを生む要因になるように思う。
技術交流会に臨む姿勢が重要
技術交流会について、よく耳にする悩みの声は、次のようなものである。
「以前は、技術交流会をやっていたが、今はやっていない」
「一応、技術交流会の場はあるが、参加者が少ない」
「声は掛けているが、参加してほしい人が参加してくれない」
「全般に関心が低い。開催が知られていない」
「場が盛り上がらない」
これらの声に代表されるように、技術交流会を魅力的に運営できていないところは少なくない。
技術交流会がこのように悪い状態にあるのは、運営する側に"想い"と"工夫"がないことが主たる原因だと思う。
上の人や周りから「交流会をやっていないのか」と聞かれたときに叱られないようにするためだけの証拠づくりのような"なおざり運営"をしている人もいる。そもそも会合を魅力的にしようという意欲に欠けているのでは、さすがに盛り上がるはずもない。
技術交流会を主催する人の中には、「技術交流会を実施すれば、絶対に新しいものが出てくるのか?」という疑問を持つ人もいる。
もちろん、このような会による成果は"決定論的"なものではない。「技術交流会で、新しいものが生まれやすくなるだろう」という"確率論的"な世界観・価値観の話である。人と人が知り合い、技術交流をすることから、新しい発想、新しい技術、新しいアイデアが生まれやすくなると信じるという性質のものである。
それ故、このような会に価値を感じる人(会の主催者やトップマネジメントなど)が、「忙しいかもしれないが、技術交流会をやろう」と決めて、「みんな参加しよう。他部門の人にも声を掛けよう」と呼び掛け、継続し続ける本気度が求められるのである。