イノベーティブな取り組みは、逆風の中を前に進めるヨットのようなもの

 本シリーズで何度も述べている通り、新しい発想の商品アイデアを具現化するプロジェクトは、最初から多くの賛同を得て進めていけるとは限らない。最初から強い追い風が吹くのはごく稀である。最初は理解されない、反対される、懸念をもたれる、外野からとやかく言われる、協力してもらえない、などイノベーティブな取り組みには逆風が付き物である。

 しかし、それでも前に進めるのがイノベーションリーダーの役割である。「上の人が認めてくれないから、できない」「みんなが協力してくれないから、できない」と諦めたのでは、イノベーションリーダーではない。逆境の中を推進していくからこそ、リーダーシップが重要である。イノベーティブなプロジェクトは、例えていえば「逆風の中を少しずつ前に進めるヨット」のようなものだ。

 確かに、逆風で普通に考えれば前に進まない状況かもしれない。しかし、イノベーションリーダーは屈することなく、細かく工夫を駆使することで、小さな力学を使いながら、少しずつでもジグザグに前に進めていく。

 なぜ、逆風でもヨットが前(実際には斜め前)に進めるのか。詳しいことはここには書かないが、どのような「力」を利用しているのかを簡単に説明すると、仕組みとしてセール(帆)の付近を流れる風によって発生する「揚力」と、センターボード(船底の中央から水中に差し込む板)による「抵抗力」を利用している。「揚力」と「抵抗力」が前に進む力の理屈なのである。

 この原理はわれわれに重要なことを教えてくれているように思う。つまり、風向きを変えようとするのではなく、ヨットの構造の工夫とセール制御の術がポイントだということである。新しいことを始める人(たち)の構造と働き掛けの術が大事だということを、ヨットが教えてくれているような気がしてならない。

新しいことを始めるときには3人で

 イノベーションにはリーダーシップが重要だが、どんな優れたアイデアをどんなに優れた人が提案しても、新しいことは社内の抵抗にあってつぶされてしまいがちである。特に、推進者が1人の場合は、つぶれやすいものだ。

 新しいことを前に進めるリーダーが最初になすべきことは、仲間をつくることである。1人で抵抗と戦うのではなく、仲間と一緒になって前に進めるようにする。そういうコアとなる推進組織構造を形成することが大切である。では、仲間は何人つくるとよいのだろうか。

 社内で新しいことを始めるとき、必ずしも「仲間は多ければ多いほうがいい」わけではない。人が増えれば、その分、意見も割れていくだろうし、緩い派閥のようなサブグループもできて、一致団結の度合いも低下する弊害も出てくるだろう。

 私が思うに、答えは、"3人"。1人は単。2人は複。3人になると団となる。