イノベーションのドラマの始まりはいつだって「反対・抵抗にあうシーン」

 前回のコラムでも書いたが、これから進めようとしているイノベーションが画期的であればあるほど、斬新なアイデアであればあるほど、最初の提案段階では、周りの反応が悪いものである。イノベーションの定義からしてそういうものだ。

 「従来から認識されている価値軸での改良・改善や性能向上でなく、(それ以前は気付かれていなかった)新しい価値の創造こそが、イノベーション」というようなニュアンスがイノベーションの定義である。

 そもそも、多くの人がその価値に気付いていない段階で価値を訴えようとするとことは、周りの人に分かってもらえなくて当然である。逆に、最初から全員賛成という提案は、おそらく、そのアイデアはあまりイノベーティブではないのだろう。

 イノベーションを連続ドラマに見立てると、その第1幕は、提案がなかなか分かってもらえない、受け入れてもらえないというシーンである。「うちの会社の上の人たちは、ほんと頭が固いんだから・・・」と嘆こうが、「どうして、こんなことも分からないの?」とわめこうが、古今東西、そういうものである。

 イノベーションの連続ドラマは、その第1幕を経て、第2幕以降で少しずつ理解者・協力者が増えていく。そして、最終回にはその新しい価値が社会・顧客に広く受け入れられたという局面に至って完結するという構成である。それはすなわち、イノベーションを担う人は、最初反対された(反対とは言わないまでも、理解されなかった)ことにめげずに、粘り強く前に進めていくというガッツとスキルが必要ということを意味する。

 「ガッツとスキル」、その正体を「影響力を発揮すること」と置き換えて話していこう。