主催者の姿勢 悪い例と良い例

 例えば、主催者となった人が企画段階でほとんど働かず、発表者と時間を決めて依頼するだけで、しかも、その発表内容についても発表者に「準備、よろしくね」と丸投げしているようなケースがある。ひどい場合には、「時間がある人、出席可能な人の中で誰かやる人いないかな?」「キミ、まだやっていないから、次の当番ね!」といった人選をしている場合もある。要するに、誰でもよく、当日の発表時間のコマさえ埋められればいいのだろう。

 主催者がこのような姿勢では、結果が良くないことは、火を見るよりも明らかだ。主催者自身に心から「技術交流会をよい場にしよう」という"想い"があれば、テーマ、発表者、内容、時間をよく吟味し、事前打ち合わせをして、内容を、魅力を高める時間を惜しまない。内容も発表者任せにするのではなく、内容、時間配分、事前の告知方法など細部にわたって丁寧に企画するものだ。

 そして、このような前向きで丁寧な主催者からは、その場の貴重さ、一期一会を大事にしようとすることが、参加者におのずと伝わっていく。

発表者の姿勢 悪い例と良い例

 発表者の姿勢についても悪い例を見掛けることがある。

 典型的な例としては、「どうせ、私の専門的な話、皆さん、素人だから分からないでしょう」といった様子で、聴き手への敬意が少なく話をする人である。専門用語を多用し聴き手の関心を削ぐ発表をしている人もいる。聞いてる側に伝わっていないことは、発表している本人も感じ取れるはずだが、なぜか、そのような説明をしても本人は平気だったりする。

 本当に内容を伝えたいと思っている人は、該当分野の専門知識に詳しくない人にも分かるように話(内容、スピード、展開)を構成する。分かりやすい「喩え(メタファやアナロジー)」と「例示(具体例、臨場感ある実例)」を事前に考えて場に挑むはずである。

 これを読んでいる皆さんは、自分の専門分野の話を分かりやすく人に伝えるために、「喩え」や「例示」を準備して説明に臨んでいるだろうか。

質疑応答 悪い例と良い例

 せっかく質疑応答の場をとっても、時間が限られるために質疑・意見を言える人が少ない、発言する人が固定化されがち(偉い人、話したがる人、沈黙に弱い人、無難な人など)というのではもったいない。

 これらの問題を解決するためには、口頭での質疑以外に、聞き手の人が紙にコメントを書いて発表者に渡すなど、多くのコミュニケーションをとる工夫がある。良い質疑応答の中には、自分がその場で直接質問をしなくとも「引き続き、この人と情報交換・議論したい!」というような良き"余韻"、"次への期待感"が残る。

会の効果 悪い例と良い例

「交流会が何のきっかけにもならず、新たな交流がほとんどない」というのでは、交流会の意味がない。そのような会は"交流会を開催するのが目的"になっている場合も多く、交流会自体が自然消滅しがちである。

 良い交流会というのは、交流会をきっかけに、新たな交流が生まれることである。多くの人が、次回を楽しみにしている。また、回を重ねるごとに会の運営が良くなっていく。

 次回は、本コラムの続き、中編として、技術交流会の質疑応答を盛り上げる工夫について紹介する。

コンサルタント 塚松一也 (つかまつ かずや)

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント

イノベーションの支援、ナレッジマネジメント、プロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとしてじっくりと変革を促すコンサルティングスタイル。
ていねいな説明、わかりやすい資料をこころがけている。
幅広い業界での支援実績多数。