他の分野のプロジェクトと異なり、研究プロジェクトの最大の難しさは“不確実性”にある。
プロジェクトマネジメントでは、ゴールイメージを共有することが大切だとよく言われるが、いくらゴールイメージを鮮明に描いたとしても実現できないということは研究ではよくある。研究のプロジェクトマネジメントは“不確実性”を前提に考えるのが実践的である。
研究・開発プロジェクトの“不確実性”
研究開発プロジェクトの“不確実性”は多岐にわたるが、大きく分けると次の3つがある。
① 技術の不確実性
そもそも新たな研究とは、既存の理論では説明できなかったことを説明できる新しい法則を見つけ出すことである。何回繰り返せば終わるのか「神のみぞ知る」試行錯誤を、なにかを見出すまで辛抱強く続けるようなタイプの研究もよくある。そして残念ながら、結局なにも見つからないこともある。
また基礎研究は、将来の活用用途が必ずしもわからない中で研究を始め、徐々にその技術分野の全体像・技術のポテンシャル・応用先・活用イメージ・用途が見えてくる。研究を進めながら出口を見つけようという、ある種のムービングターゲット的な側面もある。
加えて、ある機能を実現する技術方式が複数ある場合、将来的にどの技術が主流になるのかもわからない。ある技術方式を研究し開発できたとしても、商品に採用されなかったということは、数えるときりがない。
② 顧客ニーズの不確実性
将来顧客がどのような商品を望むのか、研究が生み出した技術によって実現できる機能に対してどの程度の対価を支払うようになるのかは、予測しにくい。ある技術を生み出して商品化できそうなところまで進めることができたとしても、顧客が望む価格で商品をつくることができそうもないために、研究成果が経済的な効果に至らないことも珍しくない。
③ 競争環境の不確実性
競争相手が、どのような戦略・どのような商品・どの程度の資源配分・どの時期・どのようなビジネスモデルで市場に参入するのかは、わからないものである。
例えば、今後成長が見込める有望市場には多くの企業が参入してくる可能性が高いため、読みどおりに市場全体が成長したとしても過当競争が起こって収益的には魅力のない市場になってしまう可能性がある。自分たちが見つけた新市場・新商品だったのに、参入プレイヤーが多くなってしまい、過当競争下では魅力がないと判断され、その分野の開発(およびそのための研究)が取りやめになることもよくある話である。