リーダー像を左右する「支配型ヒエラルキー」と「尊敬型ヒエラルキー」
人類進化生物学者ジョセフ・ヘンリックと心理学者ジョン・メイナーによる「支配型ヒエラルキーと尊敬型ヒエラルキー」の比較表はよく知られているが、私の解釈も入れた比較表を以下に記す。
不確実性が低くてメンバーから自発的な意見や違和感を聞く必要もないというプロジェクトであれば、支配型ヒエラルキーでうまくいくだろう。しかし、R&Dのプロジェクトは不確実性に満ちているし、メンバーも多様で、プロジェクトの進行に伴い状況変化も多い。プロジェクトに悪影響を及ぼすリスクもいろいろと出てくる。R&Dプロジェクトを成功させるには、尊敬型のヒエラルキーの色合いが強い組織・人であるべきだ。
尊敬型のヒエラルキーのリーダーは「Authentic Pride(本当の誇り)」がベースにある。自分のプロジェクトを行うことへの使命感、自分の内からこみ上げてくるプロジェクトの存在意義への確信。こうしたAuthentic Prideを拠り所にした言動は、メンバーの共感を生む。逆に言えば、支配型ヒエラルキーでのリーダーでは、メンバーの共感を得にくく、問題やリスク、違和感などがリーダーに伝わりにくくなり、それがプロジェクトの成功にマイナスに働くように思う。
今回の冒頭の話題「なぜこのプロジェクトをやるのか、このプロジェクトが成し遂げたいことは何か、なぜそれを成し遂げたいのか」という問いは、まさにリーダーが本当の「Authentic Pride」を持っているかを問うていることにほかならない。心底本気でプロジェクトの意義を語れるからこそ、メンバーとの関係性で尊敬型ヒエラルキーが形成されるわけである。
コンサルタント 塚松一也 (つかまつ かずや)
R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント
イノベーションの支援、ナレッジマネジメント、プロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとしてじっくりと変革を促すコンサルティングスタイル。
ていねいな説明、わかりやすい資料をこころがけている。
幅広い業界での支援実績多数。