カクシン 代表取締役CEO 田尻望氏(撮影:内藤洋司)

 先進諸国と比較してGDPの伸び悩みが見られる日本。その要因について「日本企業が付加価値を創造できていないことにある」と語るのは、『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』の著者で、カクシン 代表取締役CEOの田尻望氏だ。「売上高営業利益率が平均50%超え」という圧倒的に高い利益率を誇るキーエンスの在籍時、そして、後に実感した他社との違いを通じて「付加価値がいかに重要か」を理解したという田尻氏。付加価値を創造するプロセスや、企業変革を進める上での仕組みづくりについて話を聞いた。

まずは「付加価値」を正しく認識することから

――ビジネスの現場では「付加価値」という言葉を頻繁に耳にします。一方で、その意味を正確に理解している人は少ないように思えますが、そもそも「付加価値」をどう捉えるべきでしょうか。

田尻 望 / 株式会社カクシン 代表取締役社長CEO

京都府京都市生まれ。2008年卒業後、株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、技術支援、重要顧客を担当。大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた。その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円~2000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億円、年10億円超の利益改善企業を次々と輩出。企業が社会変化に適応し、中長期発展するための仕組みを提供している。

田尻望氏(以下敬称略)「付加価値」を理解するためには、「付加価値」と「無駄」の差をきちんと見極められるかどうか、が重要なポイントとなります。

 例えば、お客様のニーズを超える「高い技術力」など、より高いスペックを示すことが「付加価値」と考えているならば要注意です。それは「付加価値」ではなく「無駄」になってしまう可能性があります。ではなぜ、お客様のニーズを上回るのに「無駄」になってしまうのか。洗濯機を例に挙げて考えてみましょう。

 ある電機メーカーが「洗浄力の高さ」を全面に押し出した洗濯機を発売したとします。さて、この洗濯機は売れるでしょうか。

 私は、ここ数年間で「洗濯機の洗浄力」に困っている方の話を聞いたことはありません。私の妻に洗濯機を選ぶときのポイントについて聞いたところ、「洗浄力」よりも「音の静かさ」や「インテリアに馴染むデザインかどうか」が気になる、と話していました。つまり、「洗浄力の高さ」を謳った洗濯機は、消費者のニーズを超えてしまった可能性が高いといえます。

「お客様の想像を超えるような、素晴らしいものをつくらなければ」と考え、顕在化したニーズを超える商品サービスをつくりがちですが、まずは「お客様の潜在ニーズ」に気付くことが大切なのです。