日本におけるアジャイル経営の実践者たちが集結した「アジャイル経営カンファレンス」では、組織改革をリードするトップランナーたちが自社の経営を例に、組織づくりでの課題や取り組みを語った。ここでは、その中から、パナソニック ホールディングス 玉置肇氏(執行役員 グループCIO、パナソニック インフォメーションシステムズ代取締役社長)の講演を紹介する。玉置氏は「バックミラー経営ではこの先もずっと負け続ける」と日本企業に警鐘を鳴らす。

日本という国は、果たして幸せなのか?


玉置 肇/パナソニック ホールディングス 執行役員 グループCIO、パナソニック インフォメーションシステムズ代取締役社長

1993年に プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク(現 P&Gジャパン)へ入社。情報システムや地域CIOを担当した後にファーストリテイリングのグループCIOに就任。その後アクサ生命保険にて執行役員としてインフォメーション・テクノロジー本部長やチーフ・ソリューション・オフィサを歴任。2021年5月にパナソニック(現 パナソニック ホールディングス)に入社。グループCIO並びにパナソニック インフォメーションシステムズの代表取締役社長に就任、現職に至る。

 講演は日本という国に競争力はあるのかという問いから始まった。「かなりシビアなデータをもってきた」と前置きした玉置氏が示したのは、日本生産性本部が2021年に出した最新のデータ。日本の労働生産性を示したものだ。日本の順位は27位と、G7中で最低ランク。しかも、コロナ禍でさらに順位を下げているという。

 ワールドハピネスレポートの最新調査でも日本の幸福度は54位。幸福度が低いだけでなく、2022年は一人当たりGDPで韓国に抜かれ、2023年は台湾にも抜かれるといわれている。サラリーマンのエンゲージメントレベルは世界一低く、非常に厳しい状況であるこの国を、このまま次世代に託すのは「無責任、もっと言えば無謀かつ良くないことだ」と玉置氏は話す。

 パナソニックグループの創業者である松下幸之助が亡くなる直前に、「松下の従業員は幸せにしているか」と聞いたという。玉置氏は「パナソニックグループの社員は、幸せかどうかということを重く受け止めている」と話し、「日本は幸せな国なのか」と問い掛ける。