企業が保有して生活者向けに情報を発信する媒体「オウンドメディア」。オウンドメディアはどう運営すればマーケティングや収益向上に役立てられるのか? ライオンは生活情報メディア「Lidea(リディア)」を活用して、マーケティング施策の検証や製品改良を行っている。単発の製品情報発信や企業PRにとどまらない、オウンドメディアを実際のビジネスにつなげる仕組みとは。ライオン ビジネス開発センター エクスペリエンスデザイン部長の大村和顕氏にサイト運営のポイントを聞いた。
データ収集と仮説検証の両方を行う場「Lidea」
――ライオンでは、オウンドメディア「Lidea」から収集したデータをマーケティングやインサイト発掘に生かしているとのことですが、どのように行っているのでしょうか。
大村和顕氏(以下敬称略) Lideaは、2014年に立ち上げた生活情報メディアです。現在は、Lidea上でユーザーがどんな記事を読みどんなリアクションをしたのか、その行動データを分析し、インサイトの発掘や広告戦略のアクションプラン最適化に活用しています。
ポイントとなるのが、2019年から高度化を進めてきたDMP(Data Management Platform)(注)です。当社のDMPは、製品の購買データやSNSデータなどを蓄積するとともに、Lidea上のユーザーの行動データも蓄積しています。
(注)DMP:インターネット上のさまざまなビッグデータや、自社サイトのログデータなどを一元管理して蓄積するプラットフォーム。
Lideaは、このDMPに蓄積するデータを収集する場であるとともに、蓄積したデータの分析結果から得る仮説を検証する場でもあります。Lidea上で検証して効果が得られる見込みが立てば、大規模なマーケティング施策へと移行していきます。
――Lideaをマーケティング施策の立案にどう生かすのか、具体例を教えてください。
大村 例えば、圧倒的なシェアを持つ他社商品Aがあったとします。私たちとしてはAのユーザーに少しでも当社商品を購入してもらい、当社商品のシェアを増やしたい。そこでまず、DMPにある購買データの属性や嗜好から、Aを購入しそうな人を抽出します。
その抽出したAの購入層に向けて、Lidea上でさまざまな訴求内容のコンテンツを配信していきます。配信するタイミングも少しずつ変え、各コンテンツ・タイミングに対するユーザーの行動を分析します。具体的には、コンテンツ閲覧後にユーザーが当社商品ページを訪れたかどうかといったことをチェックします。
すると、コンテンツの内容や配信するタイミング次第で、ユーザーが当社商品ページを訪れる確率が高いことがわかってきます。行動変容が起きやすい“文脈”が見つかるのです。その文脈をベースにデジタル広告を展開していきます。この手法により、あるケースでは、デジタル広告に触れた人(施策接触者)の購買率が対非接触者と比べて約2割アップしました。