国土交通省では、データとデジタル技術を活用したインフラ分野のDXを推進。そのための体制強化として、2023年4月に初めてイノベーション担当の大臣官房参事官を設置した。参事官を置いた目的と役割、具体的にはどのようなことを行うのか、国土交通省の森下博之大臣官房参事官に聞いた。
大臣官房参事官の役割は組織横断的な変革を進めること
――2016年に国から建設現場の生産性向上に向けた方針が出されました。国土交通省が掲げるインフラ分野のDX推進の先駆けのように感じます。
森下博之氏(以下敬称略) ICTの活用を推進する取り組み「i-Construction(アイコンストラクション)」を掲げ、ICTで施工現場を変革することを「ICT施工」と呼ぶようになったのもこのタイミングでしたが、デジタル化の推進はかなり前から行われてきました。
大学で機械工学を専攻していた私が入省した1994年ごろには、既にICT施工の前身となる「情報化施工」の技術開発が始まっていました。2008年には「情報化施工推進戦略」という普及プログラムの策定に携わり、技術基準の変更やICT機器のイニシャルコストを下げるための支援、人材育成などに取り組んできました。このため、2016年にi-Constructionで「建設現場の生産性革命」が掲げられた時には、これまでコツコツと取り組んできたことがいよいよ本格的に社会に実装されるのだと感慨深いものがありました。
当初はICTで単体の作業工程を効率化することからスタートしましたが、現在は建設機械の稼働データを基に、ボトルネックになっている作業を改善し、省人化や工事日数削減を実現することに取り組んでいます。さらに今後は施工の遠隔化や自動化を進めたいと考えています。
――大臣官房参事官に就任されましたが、どのような役割を担うのでしょうか。
森下 国土交通省は河川、道路、港湾、空港など管轄する分野が広いこともあり、これまでは各部局がそれぞれDXの取り組みを進めてきました。
しかし、いろいろなアイデアを参考にして、トライ&エラーもあるという前提で進めていかなければイノベーションは起きません。
今回、イノベーション担当の参事官が置かれた一番の目的は、これまでの経験から得た知識やデータを、国土交通省内の各部局に横展開し、横断的な変革を進めていくことにあります。部局と部局をつなぐなど、積極的に活動していきたいと思っています。