「建設のDX」というと、建物を造るための変革が注目されがちだ。一方、戸田建設DX推進室室長の佐藤康樹氏は、造った建物の使い方のDXにも注力する。2024年完成予定の新社屋でのオフィスを想定し、デジタルツインを駆使した「職場づくり」に挑み、その知見を外部向けの事業展開に生かそうとしている。

2024年の新本社ビル完成を見据え「使うDX」を実証中

――戸田建設の事業におけるDXの位置付けを聞かせてください。

佐藤 康樹/戸田建設 ICT統轄部 DX推進室 室長

北海道大学工学部建築工学科を卒業後、1991年戸田建設に入社。建築現場を10年、企画部門を10年経験し、情報通信部門へ。ICT統轄部デジタル企画部(管理本部ICT推進部)担当を経て現職。
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好きな言葉:「過去と他人は変えられない。変えられるのは未来と自分自身だ」(カナダの精神科医エリック・バーン氏)
注目の人物:ジョン・セーヒョン氏(oVice 代表取締役CEO)

佐藤康樹氏(以下敬称略) 長期的な展望として、施設やインフラの利用データが蓄積されたプラットフォームを他のエコシステムと連携させるという、DXがつくりだす世界観を掲げています。直近の事業戦略としては、企画やコンサルティングから、設計・計画、施工、運用に至るまでのサポートをデジタルの力により提供することを掲げています。

 そのなかでも、建物を「使う・造る」を縦軸、DXの「守り・攻め」を横軸で表すと、現状では「使う×守り」の部分(下図の左上)に力を入れています。

 建設DXというと、いわゆる「現場DX」、つまり造るためのデジタル活用が注目されます(下図の下半分)。ですが、「使う」のほうがDXとの親和性が高く、また多様性のある建物に対応させるよりも、共通性のある設備環境のほうがDXに着手しやすく、すぐに成果が出るとみています。

 もちろん「攻め」のDXにも着手していますが、建設DXの基盤となる技術であるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)について、社内環境整備に取り組んでいるところであり、まずは「守り・使う」部分をしっかり実行しているところです。

建設業におけるDXのマトリクスと戸田建設DX推進室の状況(図表提供:戸田建設)
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――東京・京橋に地上28階、地下3階の「TODA BUILDING」(仮称、以下・新社屋)を建設しています。

佐藤 DXに取り組むうえで新社屋の建設はまたとないタイミングですので、できる限り先進的なことに挑もうとしています。すでに、仮移転先である現在の本社ビル「T-FIT HATCHOBORI」(東京・八丁堀)で実証的な取り組みをしているところです。その成果を、まず新社屋の自社フロアで本格展開します。その後に、新本社ビルに入居いただく他の企業をはじめ、社外向けの事業展開につなげていくことを視野に入れています。