コニカミノルタの社長として構造改革を推進した後、会長にあたる取締役会議長を務め、2022年6月にはコニカミノルタの特別顧問に就任した松﨑正年氏。他社の社外取締役として経営に参画し、日本取締役協会の副会長も務めるなど、リーダーとして豊富な経験を持つ同氏に、これからの時代に求められるリーダーの資質や心構え、必要なスキルやマインドセットについて話を聞いた。
変革リーダーの仕事は、説明・説得をとことん尽くすこと
――リーダーといっても色々なタイプがあります。ご自身はどんなタイプのリーダーだと思われますか。
松﨑正年氏(以下敬称略) 前社長が私を社長に選任した際、理由として「構造改革の実績がある」「技術革新の価値創造に意欲を持っている」ことなどを挙げました。改革、革新、変革を推進するために社長に指名されたわけで、私自身もそういうリーダーだったと思います。
私自身はコニカミノルタで若手の頃から新事業や商品開発を手掛けてきました。1990年半ば頃までコニカミノルタはカメラ・フォト事業で収益を挙げていたため、当時、私が手掛けていた情報機器のような新たな取り組みは、社内では冷ややかな目で見られることもありました 。しかし、写真のビジネスが衰退する中で、社内の危機感が高まるにつれ、新たな取り組みにも注目が集まるようになっていきました 。そんな時期に私はさまざまな経験を積み、管理職になっていったのです。
――変革しようという時、現場には反発する人もいたと思いますが、そういう人たちをどう動かしたのでしょうか。
松﨑 変わらなければならないという時に、すぐに理解して賛同する人と、そうではない人に分かれるのは仕方のないことです。まずは、賛同する人たちを中心にして進めていけば良いと思います。初めは少数派であったとしても、結果が出はじめれば賛同する人の数は増えていくものです。ただし、なぜその変革が必要なのか、という理由の説明は、丁寧にし続けることが大事です。
例えば、コニカとミノルタが経営統合した際、商品ラインナップも統合する必要がありました。特に複合機ではソフトウェアを1つにする必要があり、これが大変でした。この変革を断行するために、私は、やらずにいたらどうなるか、やることでどんなメリットがあるのかを、メンバーにとことん伝えて 理解を促しました。