コニカミノルタは、2030年を見据えた経営ビジョンステートメント「Imaging to the People」を策定した。その中では経営理念、経営ビジョン、6つのバリュー、お客さまへの約束で構成されたコニカミノルタフィロソフィーが再整理されたが、中核を成す「価値創造プロセス」は「社会課題と向き合い、DXにより無形資産と事業の競争力を強化し、持続的な価値提供で企業価値を高める」ビジョンである。そして、それらDXによる企業価値向上を実現すべく実践しているのが、事業連携強化型のSCM(サプライチェーンマネジメント)だ。同社SCM部の部長、神田烈氏がその詳細を解説する。
※本コンテンツは、2022年4月19日に開催されたJBpress主催 製造・建設・物流イノベーションWeek「物流ビジビリティ(可視化)フォーラム」の特別講演「コニカミノルタにおけるデジタルグローバルサプライチェーンの進化 事業連携強化型SCMの実践」の内容を採録したものです。
コンセプトは「グローバル」「リアルタイム」「迅速な情報共有」
創業以来、人々の「みたい」(診たい、視たい、見たい、観たい)という思いに応えるべく、さまざまな商品・サービスを提供してきたコニカミノルタ。強化を進めるSCMのプラットフォームシステム(コニカミノルタSCM)は、「コニカミノルタ社員自身の『みたい』データをグローバルに収集し、加工・分析」することをテーマとし、それらを在庫削減やコストダウンにつなげ、顧客の次なる「みたい」という思いをかなえようとする取り組みだ。
同社SCM部で部長を務める神田氏は、コニカミノルタSCMの具体像について次のように説明する。
「コニカミノルタのサプライチェーン上には事業を構成する各種レイヤーに、われわれが『みたい』と考えるデータがあります。経営層であれば『経営や事業の意思決定を支えるサプライチェーンからの情報』、生産であれば『精度の高い需要予測や生販調整、在庫管理を実現する情報』、販売会社であれば『顧客満足維持のための供給や出荷情報』といったデータです。これらのレイヤーを支えるため、当社が展開するコニカミノルタSCMのコンセプトは、グローバルベースでのリアルタイムデータ収集、そして各地域への迅速な情報共有です。データは何より鮮度が大事ですから、リアルタイムに収集できなければいけない。しかし、日本でデータを収集しているだけでは意味が薄い。アウトプットを各地域に展開するときにも、迅速な情報共有が必要です」
コニカミノルタSCMがプロジェクトとして始動したのは、今から約20年前、2000年代前半のことだった。
まずは旧SCMシステムから5拠点(販売会社:日本・北米・欧州、生産拠点:日本・中国)のデータ連携に注力。2010年代のIT進展でデータ処理速度・キャパシティーが向上したことから新SCMシステムを導入し、データ連携先となる拠点を日本・中国・欧米以外にも拡大した。
創業からカメラ・写真用フィルムの領域で培った技術を応用し、現在はデジタルワークプレイス事業(53.9%)、プロフェッショナルプリント事業(19.6%)、ヘルスケア事業(12.6%)、インダストリー事業(13.7%)の4事業を展開する。このうちデジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア事業の3事業(86.1%)でコニカミノルタSCMを導入。対象品目は現在約6000に及んでいる。