モーションコントロールを核に、生産現場のオートメーションを事業ドメインとしてきた安川電機。同社が打ち出す、新たなものづくりのソリューションコンセプト「i³-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)」は、現場のモノ・コトを起点としてデータを集積・活用し、イノベーティブなサイクルをつくり出すという試みだ。代表取締役社長(講演時は代表取締役専務執行役員ロボット事業部長)の小川昌寛氏が、その全貌と活用事例、そして今後の展望を語る。

※本コンテンツは、2022年9月27日(火)に開催されたJBpress主催/JDIR「第6回 ものづくりイノベーション」の特別講演4「i³-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)がもたらすソリューションの進化 ~データ活用によるものづくり革新~」の内容を採録したものです。

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i³-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)を構成する3つの「i」

 1915年の設立以来、モータを中心としたモーションコントロールやロボット、システムエンジニアリングをコア事業として、売上収益4791億円という規模にまで成長してきた安川電機。同社の大きなパラダイムシフトは1950年代、フィードバック情報をもとに回転数や速度を調整するサーボモータの開発・ローンチから始まった。その背景には「モータをいかに動かし、活用するか」ということに主眼を置いた「メカトロニクス」の思想があった。これは、今ではメカニカルな領域とエレクトロニクスの領域の融合を指す造語として広く用いられているが、かつては同社の商標だったものだ。

 それから約50年、同社はメカトロニクスを起点としてロボット、さらにはデジタルを基盤とした多彩なソリューションへと展開してきた。そして現在、同社がものづくり革新を目指して掲げるコンセプトが、「i³-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)」だ。安川電機代表取締役社長(講演時は代表取締役専務執行役員ロボット事業部長)の小川昌寛氏は、その内容を「integrated(インテグレーテッド:統合的)、intelligent(インテリジェント:知能的)、innovative(イノベーティブ:革新的)の3つの「i」 で、データ活用によるメカトロニクスの進化を実現し、お客さまへスマート&サステナブルなものづくりのソリューションを提供するものです」と説明する。

 さらに、「これら3つの『i』は、順番になされていくことが重要です」と小川氏。まず、最初の「i」である「インテグレーテッド」は、上図に3段階で示されているように、現場の生産活動における機器やプロセスを統合すること。次に、生産現場がデータでつながること。そして最後に、FA(Factory Automation)とIT、OT(Operational Technology)とITを連携させることを指している。

 こうして統合されたプラットフォームをもとに、自動化とデータを活用する領域に持ってきたのが、2つ目の「i」であるインテリジェントな状態だ。さらにそれを、フィードバックから生産性向上、活動の効率化など、新たな展開へとサイクルを回すことが可能になった状態が3つ目の「i」=イノベーティブだという。

「データは自動化の付加価値をさらに高めるものであると、私は確信しています。どのようにデータを取得して活用すれば、どのような価値を生み出すことができるのかについて、当社の事例を踏まえながらお話ししていきます」