デジタルガレージとDG Labの23回目となるグローバル・カンファレンス「THE NEW CONTEXT CONFERENCE TOKYO 2022 Fall」は、テーマに「Designing Our New Digital Architecture」を掲げ、法律、アート、経済、技術、それぞれの分野のパイオニアと議論し、デジタル時代の新しい社会を考えるカンファレンスとなった。Session 03では、「Creative Architecture」をテーマとしたパネルディスカッションに、新たな映像制作プロジェクト「Shibuya.xyz」の主催者と渋谷区長が登壇。そこで語られた、web3における新たな創造の形をレポートする。
「Shibuya」がつくる、新たなクリエイティブプロセスとは
Session 02の基調講演に登壇したのは、デジタルアーティストのPplpleasr氏。子どものころからアニメに親しみ、3Dアニメを学び、さまざまな創作活動をする中で「自分がやりたいことは、アートやストーリーを通して人々を感動させることである」と、作品の長さや規模は関係ないと考えるようになったという。
そして、Pplpleasr氏はDe-Fiプロトコルについての30秒アニメの作成、NFTオークションへの参加などを通してweb3で活動するようになる。
初期には個人が価値を交換していたNFTだが、やがてクラウドファンディングなど集団でNFTに入札し、所有権を共有する形が出てきた。そこでPplpleasr氏は、これを円滑に行うためのDAOをつくったという。
Pplpleasr氏は、その次のアクションを促したものとして“attention economy”というキーワードを挙げる。
「忙しい現代社会において、集中力は希少な資源です。集中できる時間は限られているのに、多くの人は映画やテレビシリーズなどに集中力を費やしています。しかも、それらを制作するにはお金と時間がかかるのに、全てが成功するわけではありません。私はここに、イノベーションを求めたのです」
そこで、Pplpleasr氏が始めたのが「Shibuya.xyz(Shibuya)」という分散型のビデオプラットフォーム。これは長編のコンテンツを無料で視聴できるようにしながら、さらなる開発と視聴者の参加を促す仕組みであり「長編コンテンツの制作の方法を変えることを目指す」とPplpleasr氏。「Shibuya」では長編アニメを無料で見られるが、ストーリーの展開に影響を及ぼしたい場合には、トークンを購入する必要がある。
もちろん、こうしたアイデアを実行するためには良質なコンテンツが必要だ。だが、幸いにも著名なデジタルアーティスト兼ディレクターであるMaciej Kuciaraが賛同し、最初の映画シリーズ、ブロックチェーン上のAIを象徴する少女を主人公とする「白ウサギ」が生まれた。
このパイロット版では、主人公が2つの選択肢を迫られる場面と、その先の2つのストーリーが用意された。視聴者はプロデューサーパスを発行し投票することで、シリーズの分割所有権のトークンを得て、選んだストーリーをエンディングまで見られるようになる。エピソード1に参加した人は、後から参加した人よりも多くのトークンを得る仕組みで、参加者のエンゲージメントを形成する。
「これまで3つの章を制作し、140万ドルの資金を集めました。ダイナミックなエンドロールに流れるトークン所有者の名前は、トークンの量によって常に変動します。ガバナンストークンに価値と高揚を与えた最初の事例ではないでしょうか」とPplpleasr氏は語る。
「Shibuya」は、世界的に注目され、今年4月には『VOGUE Taiwan』の表紙を飾り、インスピレーションの元となった渋谷のスクランブル交差点でも予告編が上映された。
「誰もお互いを知らない中で、どのように人々をコーディネートするのか。私たちはブロックチェーン上の映画プロジェクトを通じて、これを実行しています。さまざまなスキルを持って集まり、共通の目標に向かって取り組んでいます。コミュニティによる所有こそが未来をつくります」(Pplpleasr氏)