中国での製造の減少分を補えるほどの国・地域は今のところない。ロイターの分析によれば、19~21年にかけて、アップルの製品・部品の製造拠点が最も増えた国・地域は米国で、この期間の米国の比率は7.2%から10.7%に上昇した。これに次いだのが台湾で、同6.7%から9.5%に上昇。ベトナムは同2.2%から3.7%に上昇した。インド生産の規模は依然として小さく、この期間に同1%未満から1.5%に上昇した程度だ。
コーネル大学のフリードマン氏は、「ベトナムとインドは、中国のような規模、品質、納期で生産できない状況だ」と指摘する。
iPhone受託シェア7割の鴻海、大半を中国で製造
サプライヤーリストは、アップルが過去1年間に直接取引したサプライヤーの上位98%をカバーしており、それら企業が世界中に持つ600以上の製造拠点も記している。iPhoneやiPadなどのアップル製品の組立業務を請け負う、電子機器受託製造サービス(EMS)企業のほか、半導体やディスプレー、アルミ・ガラスケース、ケーブル、回路基板などの部品メーカーも含まれる。アップルは各サプライヤーとの取引額を公開していない。また、常に新たなサプライヤーが加わるため、リストの内容は毎年変わる。
このうち、台湾のEMS大手、鴻海(ホンハイ)精密工業はアップルからiPhoneの組立業務を受託し、世界シェアで約70%を持つ。
鴻海はiPhoneの大半を中国・鄭州工場(河南省鄭州市)で生産している。同工場では、22年10月下旬に新型コロナウイルスの感染者が確認され、工場と宿舎内に隔離されていた従業員らが集団で脱出する騒動が起きた。鴻海は人員補充のために新たな従業員を雇ったが、22年11月22~23日にはこれらの新人工員が手当や衛生環境の不備などを巡って大規模な抗議行動を起こした。
アップル製品の製造拠点が中国に集中することのリスクが高まっている。こうした中、鴻海はiPhoneのインド生産を拡大させる。ロイターによればインドのiPhone工場で従業員数を今後2年間で4倍にする計画だという。