10月6日、都内の会場およびオンラインで開催されたアイ・ティ・アール(ITR)主催のカンファレンス「IT Trend 2022」では、同社が毎年実施する「IT投資動向調査」2023年版の速報値が発表された。激動する環境の一方で、デジタルビジネスへの変革を迫られている日本企業は、どのようにIT投資と振り向けているのだろうか。今年は初めて、DX関連予算の調査も行われ、他社のDX取り組み状況を知ることができるようになった。

コロナ禍を経て、IT投資は上昇傾向に

 『ビジネスパラダイムの変化を見据えたDX戦略』をメインテーマとしたカンファレンス「IT Trend 2022」、午前中の最後に登壇したITRプリンシパル・アナリスト三浦竜樹氏は「『IT投資動向調査2023』速報値から見るIT投資の道標」と題して、同社が今年8月から9月に実施した「IT投資動向調査2023(*)の速報値を見ながら、最新動向を解説した。
※「IT投資動向調査」はITRが2001年より毎年実施しているもので、ITRの顧客企業および同社が保有する独自Webパネルのうち、国内企業に所属し、主にIT戦略・投資の意思決定に関与する役職者を対象としている。回答受付方法はWebフォームで、2023年度版の有効回答数は2172件となっている

​カンファレンス「IT Trend 2022」に登壇したITRプリンシパル・アナリスト三浦竜樹氏
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 コロナ禍で遅れが顕在化していたIT投資は、2021年度、2022年度に続いて増加し、2023年度も上昇する可能性が高い。この増減をもとに、20%以上の増加を+20、20%以上の減少を-20、というように換算した「IT投資インデックス」では、実績値で2022年度は平均3.39ポイントとなり、2021年度の2.28ポイントから大きく伸びた。

 IT投資インデックスを業種別でみると、金融・保険、情報通信、製造業が例年通り平均のポイントを上回った。一方、2023年度の予想値が2022年度から大きく伸びているのが卸売・小売と情報通信で、「コロナ禍によるDXの加速が見て取れます」と三浦氏。

 売上高別では、2023年度の予想値が2022年度を上回るのは、唯一5000億円以上の企業のみとなった。さらに直近事業年度の売上増減別でみると、10%以上売り上げが増加した企業では、IT投資インデックスが実績で+9.6と非常に高くなり、10%以上減少した企業では-2.56となるなど、IT投資の増減と売り上げとの相関性が見られた。

DX関連予算がITに占める割合は、製造業、卸売・小売で高くなっている
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 今回から、DX関連予算の調査も行われた。DX関連予算を計上・按分している49%の企業において、IT予算に対するDX関連予算比率を業種別に表したのが上図だ。

「DX関連がどこまでを指すのかは、企業によってそれぞれ違いますが、平均は約22%でした。最も比率が高い業種は製造業、次いで卸売・小売業となっています」と三浦氏は解説する。