誰もがデジタルファーストで考え、DXに関与する、デジタル時代に適合した企業になるにはどうすればよいのか?

 10月6日、都内の会場およびオンラインで開催されたアイ・ティ・アール(ITR)主催のカンファレンス「IT Trend 2022」、1日の最後に登壇したITR会長内山悟志の講演は「なぜ、国内企業のDXの成果が出ないのか」という問題提起とともに、DXの浸透と定着化に向けた道筋と要点を論じた。多くの企業のDXを支援してきた経験と考察をもとに、デジタル時代にあるべき企業の姿を示し、それに向けた実践的な取り組みを紹介する。

国内企業のDXは、なぜうまく進まず、成果が出ないのか

 『ビジネスパラダイムの変化を見据えたDX戦略』をメインテーマとしたカンファレンス「IT Trend 2022」のA会場最後に登壇した、ITR会長でありエグゼクティブ・アナリストの内山悟志は『DXの浸透と定着化に向けた道筋と要点』と題した講演を、自身のコンサルタントとしての体験談から始めた。それは「DXを支援した顧客企業から、DXが定着せず元に戻ってしまうという声を多く聞いた」というものだ。

 ITRが毎年行う「IT投資動向調査」では、DXを重要だと捉える企業の割合は年々上がっており、2021年には「全社レベルで取り組むべき」とする企業が3割を超え、「部門・部署によって取り組むべき」という回答と合わせると6割を超えた。

 しかし、DXの取り組みの成果は出ていない。16項目のDXテーマについて取り組み状況を質問した調査では、「進行中・完了しており成果も出ている」とした企業は、全ての項目において2割に満たなかった。

DX推進環境の成熟度を測る調査では、多くの企業がレベル3までにとどまる
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 一方で、意識・組織・人材・制度・権限といったDX推進のための環境整備も進んでいない。DX環境整備成熟度の調査では、最上位のレベル5(定着)、レベル4(浸透)に至っている企業は2割程度であり、多くの企業が初期段階から発展途上、部分整備といった段階にとどまっている。

 このようにDX推進が定着せず、成果が出ない状況について、「さまざまな障壁があると考えられる」と内山氏。例えば、変化に対する人の抵抗や経営層・中間層の不理解、既存の制度・権限。

 また、従来の組織管理、意思決定プロセスや旧来型の組織カルチャーが立ちはだかるケースも多い。さらには、硬直化したシステムによって俊敏性が損なわれ、そもそも人材とスキルが不足しているといったこともある。「特に、DXのDにあたるデジタル人材はいても、Xにあたる変革人材は不足している」と内山氏は指摘する。

DXの浸透・定着の先に見据える、企業のあるべき姿とは

「これから、デジタルはますます社会に浸透していきます。経済、産業、国際社会、バリューチェーン、顧客、ライフスタイル、業界。企業を取り囲む全てがデジタル化され、それが当たり前になっていきます」と語る内山氏。こうした変化を「鉄砲伝来がそれ以降の戦術・兵法・城の建築方法・兵士の鍛え方など、戦の在り方全てを変えたことに似ている」と例える。こうした中で戦える企業になるには、何が必要だろうか。