左:NTT東日本 ネットワーク事業推進本部 設備企画部 ビジネスデザイン部門 天岡駿介氏。右:NTT東日本 ネットワーク事業推進本部 設備企画部 ビジネスデザイン部門 西岡真紀氏

 日本の通信インフラの重要な担い手であるNTT東日本。社員数5000人近くの大きな企業であり、さまざまな役目の部署が存在するが、今回は電話やインターネット回線の設置、運用、保守を行う、通信の要中の要である設備チームが行ったDX事例にスポットを当てたい。同社のWebサイトには「NTT東日本が磨き上げた現場力」※1というタイトルで、設備チームが旧来の手法をデジタルで刷新していった様子が紹介されている。読めば、まさにこれはDXへの取り組み。そこで早速、設備業務におけるDXとは何か、どう成し遂げたか、今後はどうなるのかなどを当該チームのDX キーマンに話を聞いた。

既存業務の見直し、可能な部分のデジタル化などで設備DXを推進

NTT東日本のホームページより。設備部門が行っているDXの様子を紹介している

 NTT東日本の設備部署がDXに取り組むきっかけとは何か、同社のネットワーク事業推進本部 設備企画部 ビジネスデザイン部門 天岡氏に聞いた。

「私たちNTT東日本は、東日本全体の17都道府県域に拠点がある地域密着型の会社です。その中で、地域活性化を事業の1つの柱に据えており、自治体や住民の皆さんの課題解決をミッションとして掲げています。その中で、変化が激しい昨今、お客さまの要望は多種多様になってきました。ここにしっかり対応するには、当社自身の技術力を高め、新しい技術の実践機会を確保する必要性を感じ、設備業務でDX推進を行うことにしました」(天岡氏)

 もちろん、同社は技術を競争力のコアとしているので、以前から最新技術のキャッチアップや技術による業務効率化などに取り組んでいた。しかし、日本のDXという大きな潮流を鑑み、今まで行ってきた改善をDXの枠に取り込み、「デジタル技術による変革を目指す」を明確に宣言したと言える。DXと命名すれば、その中で育まれた技術やノウハウを、後に継承しやすくなるメリットもある。

 そこで、同社は2020年7月に設備系DX推進をメインミッションとするビジネスデザイン部門を設置。新宿区の初台本社に拠点を設け、そこから17都道府県にある設備チームのDXを目指すこととなった。

 DXの手法そのものについて、同部署 同部門 西岡氏は、まず設備チームが今行っている業務の見直し、変革から始めたと言う。「今の設備現場の業務がどうなっているのかを、現場とわれわれビジネスデザイン部門が一緒になって分析を行います。そして、その業務フローが本当に必要かを確認し、不要なら削除、必要な部分は自動化や省力化を目指し、率先してデジタル化に取り組みました」と西岡氏は語る。

 個々人の業務を見直して、できるところはデジタル化し生産性アップを目指すとはDXの常道のアプローチだが、その目指すゴールはかなり野心的だ。「設備系DXは、業務を抜本的に見直し、圧倒的に業務を効率化するという大きな目標を掲げました」と西岡氏は述べる。なお、圧倒的な業務の効率化とは、従来工程を半分の時間でこなすことを意味し、新たに生まれた時間は、社員個々人のデジタルスキルの向上やさらなる地域への貢献などに活用したいとしている。

 単純な業務の効率化のみを目的としているのではなく、社会への新しい価値提供を目指しているわけだ。

 ちなみに、設備DXによるデジタル化は、既に多様なシーンで実施されている。自社のみならず、一部自治体と共同でDXを推進している実例として、地域貢献の観点から、道路占用申請受付のデジタル化が挙げられる。工事を行う事業者は事前に自治体から道路占用の許可を得る必要があり、従来は自治体と事業者の対面で、1回の工事で3から4回のやりとりがあり、移動と紙管理に稼働がかかっていた。

 また、自治体は申請書類の紙管理に不便さを感じていた。

 そこで事業者からの申請申告業務をデジタル化することで、自社の業務を効率化し、自治体の課題解決にも取り組んでいる。さらに蓄積されたデータを活用し、次の改善につなげる準備も進めている。このように自治体の課題を解決し、事業者の業務も効率化するといったDXが既に実践されている。