また、日本国内のエアライン各社も次世代の交通手段として「空飛ぶクルマ」に注目している。

 日本航空(JAL)はドイツの新興企業、ボロコプター(VOLOCOPTER)から「空飛ぶクルマ」2機種、合計100機の購入を決定した(冒頭の写真)。2023年にも日本国内で公開試験飛行を行う運びだ。

 ANAホールディングスも米国のスタートアップ、ジョビー・アビエーション(Joby Aviation)(注2)と日本での運行サービスの検討を始める覚書を結んだ。

(注2)ジョビー・アビエーションにはトヨタが出資しているほか、量産に向けた技術的な支援も行っている。

「空飛ぶクルマ」によるエアタクシーサービスが実現すると、既存の地上の交通インフラなら20~40分かかっていた場所へ5~10分の短時間で行けるようになる。しかも動力は電気モーターなので(ヘリコプターに比べ)静粛性にも優れ、CO2も排出しない。まさに都市交通のゲームチェンジャーなのだ。

万博に向けて存在感を増すスカイドライブ

「空の移動革命に向けた官民協議会」の活動を踏まえた上で、大阪府が主体となって2020年11月に「空の移動革命実装 大阪ラウンドテーブル」(以下「大阪ラウンドテーブル」)が設立された。目的は、大阪・関西万博での「空飛ぶクルマ」の実現を加速させることである。

 そして大阪ラウンドテーブル設立当初から参画し、大阪府・大阪市と連携協定を結んで今後の取り組みの工程表にあたる「空の移動革命社会実装に向けた大阪版ロードマップ」(以下、大阪ロードマップ)の策定に向けて中核的な役割を果たしているのがスカイドライブだ。

 スカイドライブ代表取締役CEOの福澤知浩は東大工学部卒業後、トヨタに勤務しながら「革新的なクルマを作りたい」という想いで2012年に有志団体のカーティベーター(CARTIVATOR)を設立、トヨタを退職した翌年の2018年にスカイドライブを起業した。2020年8月には「空飛ぶクルマ」のプロトタイプ「SD-03」で4分間の公開有人飛行試験に成功、ほぼ同時期までに累計51億円の資金調達にも成功した。

 また三菱航空機でチーフエンジニア、副社長を歴任した岸信夫が技術最高責任者(CTO)として加わるなど、技術開発人材の確保にも注力した。

 さらにスカイドライブは2021年10月、国土交通省に「空飛ぶクルマ」の型式証明を申請して受理されている。型式証明は航空法に基づいて安全基準・環境基準を満たしているかどうかを国土交通省が審査するもので、現時点でeVTOLメーカーの中で申請が受理されたのは同社のみである。

CES 2022の「ユーレカパーク」に出展したスカイドライブ。2020年、日本で初めて公開有人飛行試験を成功させた「空飛ぶクルマ」のプロトタイプ「SD-03」を展示し注目を集めた(筆者撮影)

 2022年3月には「空飛ぶクルマ」の本格的な事業展開を見据え、スカイドライブはスズキとの連携協定を締結した。小型車の製造と販売に圧倒的な知見・ノウハウを持つスズキとの協業は「量産化」というハードルを乗り越えるための大きな一歩となるだろう。

 代表取締役CEOの福澤知浩氏は自社の未来について、「燃費の良さと使いやすさで世界の自動車市場を席巻した日本メーカーのような存在になりたい」と語っている。