■〔シリーズ〕DX企画推進人材のための「ビジネス発想力養成講座」はこちら

 この連載はDX企画、推進人材が身に付けるべきビジネス発想力の養成を目的としている。DXやデジタルビジネスの成功事例には「ビジネスの仕掛け」がうまく使われており、この連載ではそれが学べる。今回も「ビジネスの仕掛け」(シェアリング、プラットフォーム、オンライン化、クラウドファンディング〈購入型〉など)を単体で、または、組み合わせてビジネスを発想する考え方や事例を解説していく。

 応用編最終回のテーマは「既存資産転用力」である。これは筆者が使っている言葉で、企業が「既存ビジネスに使っている有形・無形の資産を活用して、既存または新しい市場向けに新しいビジネスを行うもの」で、適用範囲が広い「ビジネスの仕掛け」である。

 例えば、工事作業用品を製造販売する「ワークマン」は、作業用衣料品の機能性と低価格性という既存資産をアウトドア衣料市場の、特に若い女性向けに転用し「ワークマンプラス」や「ワークマン女子」というサブブランドを立ち上げた。その成果は有名なので事例として分かりやすいだろう。

 また、ビール醸造会社が既存資産である酵母技術を健康食品に転用、釣り具メーカーが耐水性素材という資産を梅雨時期のファッション衣料に転用、ボディーメイキングプログラムを提供するスポーツジムが、「結果にコミット」を実現する資産を英語スコアアップやゴルフの上達に転用するなど適用範囲は広い。

 全く新しい技術を新規開発し新市場に進出することはリスクが大きい。それよりも既存ビジネスで得た「技術力、ノウハウ、顧客データ、販売チャネル、特許」などの資産を生かし、新しいビジネスに活路を見いだす方が、成功可能性が高くなる。それが「既存資産転用」の意義である。

 「既存資産転用」の成功ケースの一つは、既存ビジネスで使っている「資産」を、同じ資産を必要とする他社に提供することである。なぜなら、自社で必要なものは、競合でも必要だからである。この既存資産転用(他社販売)の事例を紹介しよう。

システム資源を増加し、収益性が厳しくなった必要巨大ECサイトは・・・

 ある国にインターネットで本を売るECサイトがあった。最初はリアル書店との差別化に苦しんでいたが、送料無料、翌日配達などのお客にとって価値のある制度を整備していくうちに、利便性を認知されるようになって、売り上げが増えるようになった。

 利便性が高まったので、お客は他の商品もそろえてほしいと言うようになった。そこで、本以外の商品も販売するようにしたところ、お客はネットで多くの商材を買うようになり、世の中で評判になって、さらに他のお客や商材を呼び込む『ネットワーク効果』が発生、お客と注文が大幅に増えるスパイラルに入った。

 しかし、トランザクション(取引)量が増えた結果、ECサイトの商品検索や注文処理のレスポンスが悪化、お客の苦情が多くなった。そのため、注文ピーク時に備えたサーバーなどシステム資源の増加が必要となり、収益性が厳しくなってしまった。

 困ったECサイトの経営者は、どうすればビジネスを拡大しながら収益性も向上させられるかを考えたが、良い考えは浮かばなかったので社員に考えてもらうことにした。聞いた社員は2人。1人は古くからの社員Aさん、もう1人は中途採用した社員Bさんだった。