■〔シリーズ〕DX企画・推進人材のための「ビジネス発想力養成講座」はこちら

 この連載はDX企画・推進人材が身に付けるべきビジネス発想力の養成を目的としている。DXやデジタルビジネスの成功事例には「ビジネスの仕掛け」がうまく使われており、この連載ではそれが学べる。今回も応用編として、「ビジネスの仕掛け」(シェアリング、プラットフォーム、オンライン化、クラウドファンディング〈購入型〉など)を単体で、または、組み合わせてビジネスを発想する考え方や事例を解説していく。

 今回のテーマは「ネットワーク効果(ネットワーク外部性)活用力」である。

 例えば、あなたは将来のために英会話を勉強したいと思っている。スマホで「英語 短期間 話せる」と検索をしたが、結果が多過ぎ、どれを選べばよいのか分からない。英語が話せる友人に聞くと、「動画サイトがお勧め」と返ってきた。そこで「動画 英語 話せる」でまた検索する。

 あなたは、「初心者が動画で学ぶ英語」というサイトに注目する。レベル別の学習方法、お薦め動画、オンライン英会話サービスなどがある。体験談やコメントも充実している。

 「初心者でも問題なし」「仲間がいると勉強が続く」「安く学べる」など、読むだけで気持ちが上がり、ワクワクする。最も気に入ったのは、教材の数の多さと安さだ。会員が自作教材を売っている。しかも安くて魅力的で会員評価も充実している。☆5つの教材を選び、コメントを読む。会員登録がいるが、1回目は無料で安心と書いてある。あなたは迷わず会員登録する・・・、これが消費者から見たネットワーク効果の事例である。

 一般にビジネス文脈で使われる「ネットワーク効果」とは、自社で提供する商材やコンテンツ(消費者に価値ある情報)以外の「外部の人や事業者の提供する商材やコンテンツ」が誘因になって、消費者やお客が増え、商材が売れたり、コンテンツが増えたりして、それによって、さらに消費者やお客、商品提供事業者が増え、それによってさらに・・・という消費者、お客、事業者のネットワークがスパイラル的に増幅する効果のことである。外部の要因でネットワークが形成されるので、「ネットワーク外部性」とも呼ばれる。

 この事例では、会員のコメントが新しい会員を呼び、その会員がコメントで他の会員の教材を推奨し、その教材を使った他の会員が☆5つをつける・・・というのが、ネットワーク効果が生じている状態である。ネットワーク効果は、その特性上、利用者が多いほど価値が大きくなる。従って、大きな価値で消費者や事業者を引き付けることが求められる「プラットフォーム型ビジネス」には欠かせない「ビジネスの仕掛け」と言える。

他社の商品もそろえてほしいとお客に言われたECサイトの社長は・・・

 ある国に本や自社製文具をネット上で売るECサイトがあった。注文がしやすいし、配送も早いというので人気があり事業は順調だったが、利便性の高さゆえ、お客から「本と文具以外の商品もそろえてほしい」「他社の文房具も扱ってほしい」「買った人の感想を知りたい」などの要望が多く寄せられるようになった。

 苦慮した社長は、どうするかを社員に考えてもらうことにした。相談した人は2人。1人は営業企画担当のAさん、もう1人はお客さま相談窓口担当のBさんだった。