■〔シリーズ〕DX企画・推進人材のための「ビジネス発想力養成講座」はこちら!
この連載はDX企画・推進人材が身に付けるべきビジネス発想力の養成を目的としている。DXやデジタルビジネスの成功事例には「ビジネスの仕掛け」がうまく使われているが、本連載では、役に立つ9の「ビジネスの仕掛け」をテーマにビジネスアイデアを発想できる考え方、事例などを解説していく。
今回のテーマは〈3〉オンライン化である。ビジネス文脈でのオンライン化とは、事務所で紙と電話、FAXを使って人手によりやっていたような業務(営業、受注、在庫管理、物流、小売など)をオンライン処理でつなぐことで実現する「効率化と顧客体験価値向上」を目的とした「ビジネスの仕掛け」のことである。
経済産業省のDXレポートには企業が最初に着手すべき事項として「オンライン化」があり、オンラインミーティングツールを使った遠隔商談やSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス=利用型システム)による日報電子化などの導入を推奨している。
同省が「オンライン化」を推奨する理由は、既存の業務フローを変えずにデジタル化が比較的容易に(時間とコストをあまりかけずに)できる可能性があるからだ。筆者の知る中堅企業は営業にオンラインミーティングを使うことで営業担当者の移動・待機時間を廃し、営業時間を6割近く増加させたという。
「オンラインミーティングなんて、どの会社でもやっているけど、あまりうまくいかない」と言う人も多いが、たかがオンライン化と侮ってはならない。徹底的にオンライン化したサービスがオンライン化の乏しい巨大な事業をディスラプト(破壊)してしまうケースもあるからだ。今回はその事例を紹介しよう。
大手予備校チェーン進出に「講師が足りない学習塾」は・・・
ある文教地区に、「教え方がうまく成績が上がる」と人気の学習塾があった。この塾では経営者の塾長と数人の優秀な講師で生徒を教えていた。ある時、近所に大手の予備校チェーンが進出し、講師を引き抜いたので、そちらに受講生が流れ、塾の経営が厳しくなった。
この状況で塾長は新しい講師を入れて対抗したが、予備校チェーンはもっと多くの講師を採用したので、結果として塾の受講生は増えなかった。困った塾長は、どうすればよいかを残った講師に相談した。聞いた人は2人、1人はベテランの講師のAさん、もう1人は理系大学生講師のBさんだった。