2014年、グーグルは、ロシア政府がインターネットの自由に対する取り締まりを強化したため、技術オフィスを閉鎖した経緯がある。だが、それ以降もモスクワのオフィスで広告販売やマーケティングなどの業務を続けてきた。

 ウクライナ侵攻後、西側諸国がロシアに制裁を課したが、それに応じる形でグーグルはロシアで検索とYouTubeの広告を停止。モバイルOS「Android」向けのアプリストアでは有料アプリやサブスクリプション(定額課金)の提供をやめた。また、ウクライナ侵攻に関してYouTube上で偽情報を拡散したとし、政府系メディア動画の配信を全世界で停止した。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、グーグルは22年4月、YouTubeでロシア軍に関する不正確な情報を広めたとして、モスクワの裁判所から1100万ルーブル(約2220万円)の罰金の支払いを命じられた。

 ロシアの通信監督庁によると、21年末に同社は、禁止コンテンツの削除を怠ったとして72億2000万ルーブル(約146億円)の罰金が科された。

ロシア当局、国民に人気のYouTube遮断せず

 ただ、こうした状況でもロシア政府はYouTubeを締め出さない方針だ。デジタル発展・通信・マスコミ相であるマクスト・シャダエフ氏は先ごろ若者向け教育フォーラムに登壇し、「YouTubeへのアクセス遮断は利用者の不利益になり、そのような措置は避けるべき」と語った。

 ロイターによると、YouTubeはロシアで約9000万人の利用者を抱える超人気動画投稿サービス。同国に類似サービスはあるものの、YouTubeに取って代わるような規模には至っていない。ロシアが今もYouTubeへのアクセスを許している背景にはこうした事情もあるようだ。

 一方で、ロシアは22年2月24日以降、「ツイッター(Twitter)」へのアクセスを制限したり、米メタの「フェイスブック(Facebook)」と「インスタグラム(Instagram)」を遮断したりするなどしてSNS(交流サイト)の情報統制を強めている。

 (参考・関連記事)「ロシア、YouTube遮断やネット断絶計画せず | JDIR