中国のテクノロジー企業がひそかにロシア事業から撤退していると、米ウォール・ストリート・ジャーナルが5月6日に報じた。中国政府からは外国からの強制に抵抗するよう求められているものの、米国の輸出規制やサプライヤー(部品供給元)からの圧力を受け、事業活動の一時停止を決めているという。
ノートPC4割減、通信基地局98%減
中国テクノロジー製品のロシアへの輸出は2022年2月から3月にかけて急減した。ノートパソコンはこの期間に40%以上減少、スマートフォンは3分の2近く減少、通信基地局は98%減少した。中国の貿易データによると、同国からロシアへの全体的な輸出額は2月から3月にかけて27%減少した。
22年2月24日、ロシア軍のウクライナ侵攻を受け、米政府はロシアへのハイテク製品の輸出規制を即日発動した。半導体や通信部品、センサーなどの特定の製品の輸出規制を強化するもので、域外適用とした。
域外適用とは、米国製のデバイスや、ソフトウエア、設計などを採用して米国外で製造された製品も対象にするもの。これは米政府が20年9月に中国のスマホメーカー華為技術(ファーウェイ)に適用した規制モデルを転用したものとみられる。
ハイテク製品のサプライチェーン(供給網)には米国の機器やソフトウエアが広く存在するため、世界中の多くの企業が華為に製品を販売できなくなった。これにより華為はスマホ用高性能半導体や設計技術、ソフトウエア、製造装置などの調達が困難となった。
同様の禁輸措置を回避したい中国大手は、公表することなくロシア向け製品の出荷を削減しているという。
22年4月、ジーナ・レモンド米商務長官は、「米国と同盟国による輸出規制により、ロシアのハイテク製品の輸入が半減した」と説明した。ロシアでは半導体が不足しており、軍事用部品を見つけるのにも苦労しているという。同氏は、米ニューヨーク・タイムズとのインタビューで「輸出規制を順守しない企業には罰則を科す」とも述べていた。
一方、中国商務省は22年4月、米国などの輸出規制が同国のロシアとの貿易を混乱させていることを認めた。その一方で中国企業に対して「外国からの強制に屈伏しないことや、不適切な声明を出さないこと」などと要請したという。