市場の激しい変化に対応するためにデジタルツールを営業現場に導入しても、期待通りの成果が出ない企業も多い。TORiX株式会社 代表取締役の高橋浩一氏は、「デジタルツールを営業現場でうまく機能させていくためには『勝ちパターン』を明確にした上で、そのパターンに沿った進捗状況を可視化して、客観的かつ定量的に管理することが大切です」と語る。本稿では、SFA(営業支援システム)を最大限に活用した、あるべき営業のマネジメント方法について紹介する。
※本コンテンツは、2021年12月6日に開催されたJBpress主催「第3回 Marketing & Sales Innovation Forum」の特別講演Ⅰ「逆風下でも事業成長を実現する『無敗営業』の極意〜勝ちパターンを起点にする3つの鍵〜」の内容を採録したものです。
多くの企業がデジタルツールという手段を「目的」にしている
事業立ち上げや組織づくりのコンサルティングに豊富な実績を持つTORiXでは、これまでも特に営業の仕組みづくりに力を入れてきた。具体的には、営業未経験者や新卒者を早期に戦力化する方法を体系化し、多くの企業にノウハウを提供するための支援やアドバイスだ。高橋氏はこれらの経験をもとに、組織の営業力を高めるには「勝ちパターン」とデジタルツールを結び付けることが有効だと強調する。
昨今、ポストコロナを踏まえ、「営業×DX」のコンセプトで組織の立て直しを図る経営者は多い。しかし、いざ着手すると、「現状が全く見えていないから見える化しよう」「人が育っていないから人材育成をやろう」「目標達成の意欲が薄いので、チームのコミュニケーション強化で各人の意識の底上げを図ろう」という具合に、本来目指すべき目的より「手段」が先行してしまうケースが非常に多い。実はこれこそが、営業におけるデジタル導入で最も避けるべき「禁じ手」なのだ。
というのも、確実に成果を上げるためには、まず「目標」を決め、その実現のために「いつ何をするべきか」を明らかにする必要があるからだ。それらを飛ばして、やみくもに「見える化」を進めれば、何でもかんでも可視化しようと奮闘した揚げ句、肝心の目的達成に必要なことを見失ってしまう。
同様に、人が育っていないから人材育成を進めようとしても、獲得目標が明確でないままでは、マネジャーがカレンダーを見て商談を増やすよう促したり、アポイントメントを取るためのアドバイスをする程度で終わってしまう。また「目標達成意識が薄い」という理由でコミュニケーションを強化して意識の底上げを図る場合も、目標達成や大型受注をしたら褒めるといったことに終始してしまうと、目標や受注を達成していない下位8割のメンバーは、いつまでたっても浮上してこないだろう。
これらの施策は、どれも本質的な解決策とならない。組織の営業力を強化するには、チームで設定した最終目標=営業成果を確実に実現する「勝ちパターンの確立と言語化」が不可欠だからだ。