※本コンテンツは、2021年6月30日に開催されたJBpress主催「第2回 Marketing & Sales Innovation Forum」の基調講演「新しいマーケティング発想」の内容を採録したものです。
消費行動は「ソリッド消費」から「リキッド消費」へ
現代人の消費行動は、消費対象(製品)を所有することから、消費対象となる資源の循環にシフトしています。いわゆる「サブスクリプション」や「シェアリング」などのビジネスはBtoB、BtoCのいずれにおいても活況を呈し、トレンドは旧来の「ソリッド消費」から「リキッド消費」へ移行しています。
アメリカにおける2004〜2021年のGoogle Trend(検索トレンド)によると、「購買」に関する検索件数が減少傾向にあるのに対し「使用価値」に関する検索件数は年々増加しており、2020年には「使用価値」の検索件数が「購買」の検索件数を上回りました。日本においても同様の傾向が見られます。
デジタル化が進むにつれ、私たちの消費生活は大きく変化しています。リアル店舗とデジタル店舗の在り方も様変わりし、新しいビジネスも生まれています。インターネット上には商業的な情報があふれ、消費者がブランド情報を容易に入手できる一方、理性的な消費者に有効な刺激を与えにくくなっています。新しい時代の「マーケティング」を正面から検討する時期が訪れているのではないでしょうか。
リキッド消費のマーケティングの鍵「ブランド・カテゴライゼーション」
リキッド消費へのマーケティング対応を考える上で、欠かせないキーワードがあります。それを幾つかご紹介いたします。まずは「ブランド・カテゴライゼーション」です。
「消費者が短期的に記憶できる数字の桁数は7±2(5〜9)」といわれていますが、インターネットの普及、グローバル化、そしてリキッド消費の進展を背景に、競合ブランドの数が間違いなく増加し、消費者に“記憶”してもらいにくくなっています。そこで顧客にとって自社のブランドがどのような位置付けなのかを理解した上で、自社ブランドをマネジメントする必要があります。そのときに有力な枠組みが、ブランド・カテゴライゼーションです。
ブランド・カテゴライゼーションでは「入手可能集合」(その気になれば手に入れられる集合)が出発点となります。そこから「知名集合or非知名集合」(名前を知っているか否か)、知名集合からは「処理集合or非処理集合」(名前だけではなく評価する情報を持っているか否か)に分岐。最終的には、以下の4つにカテゴライズされていきます。
・推奨集合:人にお薦めしたいと考えるブランド
・想起集合:購入したいと考えるブランド
・拒否集合:購入したくないブランド
・保留集合:拒否はしないが何らかの理由で購入をとどまるブランド
こうした枠組みを理解し、自社ブランドの立ち位置(ターゲット層から見て、どの集合に属しているのか)が把握できれば、ブランドによる提供価値の見直しやターゲットの再評価などが可能になります。コミュニケーション戦略の策定(非知名→知名、非処理→処理への戦略)、時系列把握によるマーケティング施策の再構築もできるため、ブランド・カテゴライゼーションは「ブランドマネジメントの鍵である」といっても過言ではありません。