経営者に求められるマインドと行動

 では、こうしたDX推進において、経営者に求められるマインドと行動はどのようなものか。 内山氏は経営者に求められる行動様式として「経営者5カ条」を提示した。

 第1に「トップの思いを込めた宣言と行動を示す」。DXによって企業がどこに向かうのかを「ビジョン」として明確に示すだけでなく、自ら主体的に動く・試す・使うという行動を起こすことが重要である。

 第2に「異質なものを受け入れる器量を持つ」。日本企業の特徴である同質性の高さは、不確実性と変化の著しいビジネス環境において間違いを犯しやすく、またそれに気付きにくい。同質性という殻を、経営者自ら打ち破る行動を示す必要がある。

 第3に「自前主義と脱自前主義のメリハリをつける」。捨てるものと残すものを明確に示す。そのためには自社のコアとなる領域をゼロベースで見つめ直す必要がある。その際に、結果として強みとなった能力が、本質的なコアであるかどうか問い直すことが重要である。

 第4に「挑戦者の後ろ盾となり、後押しをする」。旗を振るだけでなく、自ら変革が進む環境を整えるための行動を起こす。また、長期的視点を持ち、挑戦者の後ろ盾となって鼓舞し、活動を後押しし続けなくてはならない。

 第5に「組織の自律性を高め、権限を委譲する」。これまでの経営や組織運営に関する常識を捨て、全員が内発的動機付けに突き動かされた結果として、成果が生み出される状態をつくり上げる。

「こうした行動様式をベースとすれば、経営層・ミドルマネジメントの在り方も変わっていくはずです。最前線でお客さまの矢面に立つ現場スタッフが、その場でリアルタイムに自律的な行動ができることが最も望ましいわけですから、ミドル層は彼らが自律的行動をしやすくサポートする、コーチやキャプテンのような存在でなければなりません。そして経営層は、目指すべき方向性を自らの言葉で全社員に示し、言葉だけでなく行動でそれを示していくということが必要になってくるでしょう」

 現場スタッフやミドル層が自律的に意思決定できるように権限を与え、場と機会を提供し、活動を後押しすること。経営者には、これらの役割が求められていく。