DX実践施策から見るデジタル化4つの潮流
内山氏は「監視カメラの映像、駅改札の入出場記録、キャッシュレス決済の利用履歴など、あらゆる『データ』がデジタル化されて捕捉できるようになる」「SNS、eコマース、IoTなど、インターネットなどのネットワークによって人・モノが『つながり』を持つ」「仮想通貨取引、仮想空間での旅行体験、AI教師による授業など、物理的な世界の他に仮想的な世界が存在する『バーチャル』との行き来ができるようになる」と、デジタル化によってもたらされる本質的な変化について整理した上で、「注目すべきデジタル化には4つの潮流がある」とする。
1つ目の潮流は「ビジネストランスフォーメーション」(ビジネスに直結する業種・事業特化型のIT活用)だ。
「出光興産では、製油所の高経年化への対応、ベテラン社員の引退による製油所保全のノウハウの継承という課題に対し、ビッグデータ解析による配管腐食の早期検知や、より高精度な腐食評価の実現などを目的とした実証実験を実施。具体的には、配管画像・動画を自社の腐食評価基準に照らし、ピクセル単位で評価するモデルを、深層学習を用いて実装しました。裸配管・保温材配管を対象に配管画像を学習して構築されており、自社基準で80%以上の高い解析精度を達成し、実務レベルの有用性を確認できたとしています」
2つ目の潮流は「カスタマーエンゲージメント」(マーケティングとITの融合)。
「住宅設備メーカーのLIXIL(リクシル)は、VR・ARなどの最新のデジタル技術を活用し、顧客にバーチャル体験をしてもらうことで理想の住まい探しをサポートする『LIXIL Digital Studio GINZA』をオープンしました。ヘッドマウントディスプレイを装着すると、最新のキッチンやバスルームのある空間が360度広がり、商品が設置された空間をよりリアルにイメージできます。コロナ禍で困難となった対面での顧客対応を可能にするだけでなく、遠隔地の顧客の誘導や工務店・リフォーム店担当者と同伴することで商談の円滑化にも寄与しています」
3つ目の潮流は「フューチャーオブワーク」(将来の働き方をITで切り開く)。
「今後、少子高齢化が進行し、労働力不足が深刻化することが懸念されており、人材の採用や育成は企業にとって重要課題となっていく中、教育・研修や面接などにおいてオンライン、動画、AIなどの活用が進んでいきます。ソフトバンクが開発したAI動画解析システムによる面接では、応募者に事前に設定された質問に対する回答を動画で提出してもらい、その動画データを独自に開発したAI動画解析システムで評価を自動算出します」
最後は「デジタルエコノミー」(デジタルを活用した新規ビジネスモデルの創出)。
「製品のスマート化とは、状況に応じて制御・運転を行ったり、運用を最適化したりするインテリジェントな機能を製品に組み込むことを意味します。これまでは、製品を顧客に販売して終わり、というビジネスモデルでしたが、製品をスマート化することにより、販売して顧客が利用し始めてからデータを収集することができ、さまざまなサービスや付加価値を提供することができるようになります」