では、いかにSDGsに取り組むか?
現状、日本企業でSDGsの取り組みがなかなか進まない理由について、夫馬さんは自社への影響が見えづらいことを挙げます。SDGsの17ゴールだけを見ても、それを理解して“自分ごと”と受け止めるのは難しいことです。「テーマを知っていただくことは非常にいいのですが、その背景にある大きな変化や危機感を理解することが必要です。今は日本語の情報も増えましたので、ネットで調べるだけでもさまざまな課題が分かると思います」(夫馬さん)
とはいえ、忙しい経営陣にはSDGsについて調べる時間的な余裕はないかもしれません。そこで、夫馬さんは若手の社員などに調べてもらって発表してもらう方法をお勧めしています。若い人の方が学生時代からSDGsについて勉強をしており、理解が進んでいるからであり、その内容を発表してもらうことで社内全体へのインプットにするというのです。
SDGsについては経営陣がその真の目的を正しく理解し、プロジェクトのリーダーとして推進していくことがベストではありますが、多くの経営陣は変わることへの恐怖を感じています。「これまでうまくやってこれた、わざわざ変える必要はない」というように。
実際、夫馬さんがコンサルティングをする中でも、こうした状況に数多く遭遇したそうですが、そうした場合、夫馬さんは「これしかもう企業は生き残れません。SDGsに取り組んでいないと、近い将来に市場から撤退せざるを得なくなる」と断言しているといいます。
これまでの30年が、比較的変化なく事業を続けてこられたのは奇跡だと話す夫馬さん。「これからの30年は今まで通りにはいかないことを経営陣は正しく認識して、自社はもちろん、サプライチェーンに対しても取り組みを広げていかなければなりません。近い将来の大きな変化に対応するため、ものすごく柔軟になってほしい」と夫馬さん。
日本の先行事例も多くなってきています。それは大企業でのものが多いですが、それは中小企業でも参考にできます。「例えば、労働力が足りない問題。最近はコンビニなどを中心にセルフレジが増えていますが、これは単なる人件費削減ではなく、本当に人材が少ないのです。これからどんどん人が減っていく状況は、大企業も中小も変わらないですよね。危機感を持って対策を考えていただくことが必要です」(夫馬さん)
また、夫馬さんはたとえ大企業でも、1社だけで取り組むのは不可能である点を指摘します。「仲間作りも必要です。1社だけで取り組んでも『うちだけではできない』と、必ず壁にぶち当たりますから。まずは経営者団体や地元の集まり、業界団体などから声を掛けてみるといいと思います。大手の取引先や、銀行に間を取り持っていただくことも一つの方法です」