部内の複数プロジェクトを支援する「部門PMO」の役割

 では、そんな「プロジェクト推進部」の特徴とは何か。まず「プロジェクト推進部」では専門的に繰り返し大規模プロジェクトを行うため、その分、ノウハウや知見が蓄積されやすいということだ。その結果として、プロジェクトの成功確率を高めることができるというメリットが生まれる。

 そして、もう1つの特徴が「プロジェクト推進部」の設置と同時につくられた「プロジェクト・サポート・グループ(PSG)」という機能を部内に擁していることだ。このリクルート独自の用語である「PSG」を一般的な言葉に置き換えれば、いわゆる「部門PMO」ということになる。まだ聞き慣れない方も多いかもしれないが、この「部門PMO」の最大の役割は部長直下に組織され、部内の複数のプロジェクトを“横断的”に把握し、適時支援することにある。

 「プロジェクト推進部」での「部門PMO」の仕事を具体的に言えば、プロジェクト状況のモニタリングや解決策を探る報告や相談、ステージごとの成果物レビューほか、進捗や課題の可視化。あるいは必要であれば、プロジェクトへ新たにPMOを派遣することや、プロジェクト内のノウハウやデータの蓄積と展開なども担当する。この「部門PMO」という組織が生まれた理由とは何だろうか。坂本氏が説明する。

「もともと、部門PMOは大規模なプロジェクトを滞りなく回すための、チェック機能としての組織として生まれました。どちらかといえば、第三者的な立ち位置であり、ガバナンスを効かせてプロジェクトのリスクや状況を把握することを重視しており、主にプロジェクトの可視化、監査的な役割を果たす性格の組織として設置されたのです」

 しかし、プロジェクトを推進していく中で、ここ数年は「部門PMO」の役割が変化しつつあるという。坂本氏が続ける。

「一番大きな要因はプロジェクトが複雑化したことです。社内では事業環境の変化によって、今までとは異なる新しいビジネスの創出が求められるようになりました。それに伴い、事業、ガバナンス、提携先などさまざまな要件が加わった上、システム開発ではスマートデバイス、クラウド、ビッグデータ、AIなどが複雑に絡み合ったアーキテクチャーを構築しなければならなくなった。いわば、これまでプロジェクト推進部と部門PMOでつくり上げてきたスキームでは立ち行かない、進めることができないプロジェクトが増えてきたのです」