計画順守を早期に実現するために必要なこと
計画順守のためには、順守できる生産計画を立案し、現場が順守しなければならないというマインドを持って生産することである。
順守できる計画にするためには、今一度、生産計画立案の運用が正しく行われているか、すなわち計画立案時点での判断や調整が正しい基準に基づいているか、属人的に勝手な基準で行われていないかなどをチェックすることが有効である。
計画立案が正しく運用されていれば、参照している情報類が正しく更新されていることになる。更新をチェックすることで、計画が正しく立案されているかどうかを判断できると思う。
タイの現場で散見される問題として、適正な達成率や余裕率を加味していないケースがある。生産管理システムにおけるマスターといわれる元々の基準そのものを勝手に変更してしまっている、あるいは現場の状況に応じて適宜更新することができず、人や設備のリソース、材料や部品などの手配に過不足が生じている、などである。
そうした場合は、生産計画立案の運用フローを通じて、適正な計画を立案できるようにする必要がある。
現場での統制については、現場に計画が分かりやすく(種類、量、順序、時間など)指示されていることがスタートだ。いかに正しい生産計画を作成しても、それが現場に伝わらなければ意味がない。
どのような形で生産現場に指示が出ているか、またそれを受けた管理者が現場作業者にどのように指示を出しているか、現場の作業者が順守しなければいけない計画を理解して作業しているか、このように順を追って確認してみると情報伝達に問題がある場合が多いように感じる。
また、計画を順守できるようバックアップとして作業者の配置に柔軟性を持たせることが重要である。作業者の配置の柔軟性としては、勤務時間の柔軟性と職場配置の柔軟性が考えられる。
勤務時間の柔軟性について考えると、タイの現場作業者は終了時間まで作業すればいいと考えている人が多く、作業者に定時の送迎を行っている企業も多いと思う。その場合は終了時間を柔軟に指示することができなくなるため、生産計画に応じて送迎時間を柔軟に対応できるような配慮が必要である。
また、作業者の配置の柔軟性としては、日頃から計画的な多能工化を推進し、複数工程を実施できる作業者を育成しておくことが求められる。
いずれにしても日々の生産計画に応じて、日々の作業の見通しを把握、作業者の能力を発揮させて生産計画を順守するようなマネジメントに変革することが大切だ。
また、本稿ではあえて触れていないが、計画を順守しようとすることで不良や設備故障などトラブルが顕在化され、その対策を進めることで安定した生産が実現することにつながる。
下図は基本的な生産管理フローにおける強化ポイントを示したものである。計画の立案、指示から現場での統制における実施すべきことが理解できると思う。
また、このようなフローを設計し、担当者や情報の具体化、タイミングの設定などの運用のルールを決め、それを粘り強く継続運用することで、仕組みや人が適切に機能し、成長していく。
第6回はタイの製造拠点における生産管理の課題と処方箋について説明した。次回は人づくりという観点で「管理者育成」について具体的事例を交えて整理する。
コンサルタント 角田賢司(つのだ けんじ)
生産コンサルティング事業本部
プロセス・デザイン革新センターセンター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 シニアコンサルタント
IEをコア技術として収益向上のコンサルティングに取り組んでいる。自動車(部品)、化学プラント、樹脂成型、建材、食品等、多業種で収益向上の支援を実施。現場の生産性向上、品質向上、調達コストダウンや在庫削減等複数テーマを同時に展開、マネジメントの支援を行う。近年はタイ・中国等の製造拠点支援として生産性向上や品質向上の成果実現と併せ、マネジメントの仕組みづくり、ローカル人材育成を実践