オンライン診療を通じて地域間格差をなくす
現在、vivolaが進めているものの1つがオンライン診療の仕組みづくりだ。自由診療が基本となる不妊治療はやはり都市部と地方では格差が生じてしまう。実際、体外受精ができる施設は全国で618箇所あるが、そのうちの320が関東一都三県に固まっている。そのうち都内は102箇所。つまり、都市部と地方では全然見え方、治療環境が異なっている。
角田 地方は総合病院や公立病院が地域医療のハブになっていることが多いですが、生殖医療はすごく特殊なので、そもそも不妊治療が受けられる医療施設が県に1つしかない、そこまでに2、3時間かかる、交通インフラも整っていないので車で行かないといけないという患者さんがすごく多い。生殖医療というのは少子化対策、子どもを産むという意味では、国や自治体がサポートしていかなければいけない領域であり、都市部に比べて患者数の少ない地域でも、病院の質を担保するための新しい技術や設備を整える公的な補助が必要であると思っています。
弊社も今、オンライン診療の仕組みを作ろうとしていますが、それは地方の治療環境に恵まれない方をサポートするためのシステムから始めて、できれば地方の生殖医療の先生方の技術的なサポートもできればと思っています。
vivolaが進めるオンライン診療は「地域医療を生かすこと」を柱とし、地元の産科や婦人科の医師と県の生殖医療の医師が連携することで、通院頻度の高い検査は地元の産科で受け、そのデータをvivolaのデータベースを通じて生殖医療の医師が診断し、治療の方針を伝えるというもの。経済産業省の補助金に採択され、今年中に特定のエリアで実証実験に進めるよう、準備を進めている。
最後に、角田氏の考える未来の社会像について聞いた。
角田 不妊治療の領域では、期間を短くすることがすごく重要かなと思っています。どれだけ保険適用になって金銭的なサポートが得られたとしても、それが長期間続けば患者さんのメンタルヘルスは崩壊してしまうし、旦那さんとのコミュニケーションも難しくなってくるところがあるので・・・。不妊治療を始めたらもう1年で結果が出るような人が大半になるような世界に変えていきたい。その最短化を実現できるような治療のデータベースをまず絶対に作りたいと思っています。患者さんがステップアップしやすい世の中であったり、そこを支える職場環境など、啓蒙コンテンツで働き掛けながら、「本人も納得して治療を卒業していく」という世界をまず実現したいと思っています。
その先の事業として、将来的には、vivolaの事業として女性ホルモンを軸にしたライフログであったり、管理を事業として広げていきたいと言う。女性ホルモンのデータが大量に集まってくると、例えばPMSであったり、産後鬱、更年期というところの病気予測や管理につなげられる可能性がる。そこを自分でうまくコントロールできれば、世の女性たちがもっと自身らしく、納得のいくライフサイクルを歩めるようになる。